第51回 相続と時効

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熊本 健人

2022-02-25

第51回 相続と時効

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今回は、時効について解説していきます。

時効とは?

そもそも、時効とはなんでしょうか。時効とは、ある事実状態が一定期間継続した場合に、その事実状態に即した権利関係を確定できる制度をいいます。たとえば、あなたがある土地を所有している場合に、第三者がその土地を自分の土地だと思って一定期間継続して使用すると、その第三者は土地の所有権を主張することができる一方で、あなたはその土地の所有権を主張できなくなってしまいます。本来の権利関係ではなく、一定の事実状態が尊重されることになるわけです。これを時効といいます。
なぜこのような制度が存在するのかというと、長期間継続した事実状態を尊重することによって、本来の権利関係を維持するよりも、社会秩序や法律関係の安定が保たれるからです。権利関係が絶対である法の世界では、事実状態を尊重する時効制度は、例外的な位置づけといえるでしょう。

遺産分割と時効

では、相続に関する時効にはどのようなものがあるでしょうか。

相続が発生したときにまず考えるのは遺産分割です。では、遺産分割の時効は何年でしょうか。
実は、遺産分割を請求する権利には特に期間制限がなく、時効は存在しません。したがって、相続人は他の相続人に対して、いつでも遺産分割を請求することができます。
 もっとも、遺産分割を長期間行わずに放置すると、相続が次々と発生し、遺産分割協議を行うことが大変になります。また、遺産分割を行わないと、相続財産は基本的に相続人全員の共有になるため、多くの相続人が1つの遺産を共有しているという状態になりかねません。そうなると、共有状態にある不動産を思うように売却できないなどの不都合が生じます。そのため、遺産分割請求には時効がないとはいえ、早めに遺産分割請求を行うに越したことはありません。

相続放棄と時効

では、相続放棄の時効はどうでしょうか。これはご存知の方も多いと思いますが、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」とされています。
ここで「自己のために相続の開始があったことを知った時」というのは、被相続人の死亡を知り、かつ、自身が相続人となることを知った時を意味します。つまり、被相続人の死亡の日と必ずしもイコールになるわけではありません。たとえば、被相続人に親はなく、配偶者と子1人、それに兄が1人いたとします。第1順位の相続人は、配偶者と子になるため、兄は配偶者と子が相続放棄をしなければ相続人にはなり得ません。したがって、仮に、兄が被相続人の死亡した日に死亡した事実を知っていたとしても、兄の相続放棄の時効は、配偶者と子が相続放棄をしたことを兄が知った日からスタートすることになります。被相続人が死亡してから1年後に配偶者と子が相続放棄したことを兄が知ったのであれば、1年後から時効はスタートすることになるのです。
なお、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月というのはなかなか短い期間です。そのため、この期間内に被相続人の財産を調査した結果、相続を承認するのか放棄するのか判断がつかない場合は、家庭裁判所に対する申立てにより、この期間を伸長することができます。一般的には、1~3か月程度は伸長が認められます。

遺留分侵害額請求と時効

遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害されている相続人が、遺留分を侵害している人、つまり、法定相続分と異なる割合で遺贈や贈与を受けている人に対してその侵害額を請求することをいいます。遺留分というのは、何もせずに自動的に得られる権利ではなく、侵害に対し返還を請求することによって初めてその恩恵を得られる権利なのです。

では、この遺留分侵害額請求権の時効はどの程度でしょうか。
これについては案外短く、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間とされています。ここで、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」とは、相続の開始と遺留分を侵害する贈与又は遺贈のあったことを知るだけでなく、贈与や遺贈が遺留分額を侵害することを知ることまで必要です。つまり、単に遺言があることを知っただけでは足りず、たとえば、1人の相続人に対してのみ遺贈がなされるなどの遺留分が侵害される内容の遺言があることまで知ることを要します。
遺留分侵害額請求権は、侵害する相手に対し、意思表示を行うことで請求します。口頭でも可能ですが、証拠に残すために、配達記録証明付きの内容証明郵便による方法で送付することが一般的です。
なお、遺留分侵害額請求の意思表示をした結果として生じる金銭給付請求権は、別途5年の時効にかかるため、注意が必要です。また、遺留分侵害額請求権は、相続の開始や遺留分の侵害の事実を知ったかどうかにかかわらず、相続開始時から10年を経過すれば消滅します。

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熊本 健人

学習院大学法学部卒業
神戸大学法科大学院修了

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