前回に続き、「再婚と相続」をテーマに、以下CASE②を検討してみます。
(前回のCASE①をご覧になっていない方は、ぜひご覧ください。)
<CASE②>
A男はB子と結婚し、子Cが誕生した。その後、A男は離婚し、D子と再婚した。D子には連れ子E・Fがいる。A男は、自身に相続が発生した場合、D子の連れ子であるE・Fに財産を相続させたいと考えている。
再婚相手の連れ子に財産を渡す方法は?
CASE②において、A男が再婚相手D子の連れ子であるE・Fに対して財産を相続させたい場合、どのような方法が考えられるでしょうか。
まず、前提として、Aが死亡した場合に相続人が誰になるのか(推定相続人が誰か)について、CASE①と同様に整理してみます。
前妻との間の子Cと再婚相手のD子は相続人になりますね。しかし、E・Fは再婚相手D子の連れ子であり、A男の子ではないため相続人にはなりません。被相続人の子は相続人になりますが、ここで言う「子」とは、実の子である「実子」と法律上の子である「養子」を意味するところ、E・FはA男の実子でも養子でもないからです。
そこで、A男としては、E・Fと養子縁組を行い、E・Fを「養子」にすることで、自身の財産を相続させることが考えられます。
養子縁組の方法は?
養子縁組を行うには、被相続人と養子となる者の両者の合意のもと、養子縁組届を役所に提出する必要があります。もっとも、養子となる者が15歳未満の場合は、法定代理人が代わりに養子縁組の承諾をすることが可能です(民法797条1項)。そのため、E・Fが15歳未満の場合には、親権者(法定代理人)であるD子の同意があれば養子縁組を行うことが可能となります。
(十五歳未満の者を養子とする縁組)
第七百九十七条 養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
仮にE・Fが15歳以上の場合には、E・Fが養子になろうとする意思を有していることが必要です。また、これに加え、D子の同意を得ることも必要になります。なぜなら、配偶者のいる者が養子縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならないとされているからです(民法796条)。
(配偶者のある者の縁組)
第七百九十六条 配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
上記の養子縁組は、当事者の合意があれば自由にできる「普通養子縁組」です。普通養子縁組はあくまでも戸籍上の親子関係であり、実の親との親子関係には影響を与えません。そのため、再婚相手の連れ子と普通養子縁組をしたとしても、連れ子は実の親から相続を受けることもできます。
再婚相手の連れ子と養子縁組を行う場合は、「普通養子縁組」を行うことが一般的ですが、養子縁組には、実の親との関係を断ち切る「特別養子縁組」もあります。この場合、養子は、関係が断ち切られた実の親から相続を受けることはできなくなります。
遺贈、死因贈与、生前贈与とは?
その他の方法としては、遺贈、死因贈与、生前贈与などを行うことが考えられます。
「遺贈」とは、生前に被相続人が財産を渡す相手を「遺言」によって指定し、被相続人の「死亡」によって財産の権利移転が行われる場合を言います。
「死因贈与」とは、生前に被相続人が財産を渡す相手をその者との「契約」によって指定し、被相続人の「死亡」によって財産の権利移転が行われる場合を言います。
「生前贈与」とは、生前に被相続人が財産を渡す相手をその者との「契約」によって指定し、被相続人の「生前」に財産の権利移転が行われる場合を言います。
以上の方法のうち、どの方法をとるべきかについては、相続税や贈与税の税務上の問題を考慮する必要があります。また、撤回の可否や要式性等を考慮して判断する必要もあるでしょう。例えば、遺贈や死因贈与は撤回が可能ですが、書面による生前贈与は撤回できません。また、遺贈は要式性が求められますが、生前贈与や死因贈与には要式性は求められません。以上のような事情を考慮し、どの方法をとるべきか判断する必要があります。