第31回 相続と登記②

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熊本 健人

2020-09-18

第31回 相続と登記②

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前回に引き続き、相続と登記に関する問題についてお話します。

遺贈と登記

<CASE1>
Aに妻はなく、子B・Cがいる。Aの死亡後、「甲不動産をD(Bの前妻)に遺贈する」旨記載された遺言書が発見された。ところが、Bの債権者Eが甲不動産を差し押さえてその旨の登記をしてしまった。Dは甲不動産をEに取得されてしまうか。

 遺贈と登記の問題を検討する前に、遺贈とは何かについて簡単に説明します。
遺贈とは、遺言によって無償の財産的利益を他人に与えることをいいます。遺贈には、包括遺贈と特定遺贈の2種類があり、遺産の全部又は一部を包括して遺贈する遺贈を包括遺贈といい、財産を指定して遺贈する遺贈を特定遺贈といいます。例えば、「相続財産の全てをXに与える」や「相続財産の2分の1をYに与える」などは、包括遺贈です。他方で、「所有不動産の全部をXに与える」や「有価証券の2分の1をYに与える」などは特定遺贈になります。

 包括遺贈と特定遺贈は、その効果が異なります。包括遺贈の場合、受遺者(遺贈を受ける者)は、相続人と同一の権利義務を有するとされています(民法990条)。例えば、相続財産の3分の1を遺贈された受遺者は、遺言によって、あたかも3分の1の相続分を有する相続人に指定された者のように、他の相続人と共同で相続財産を承継すると考えられています。他方で、特定遺贈の場合、遺言の効力発生の時から物権的にその効力を生じるとされています。例えば、遺贈された特定不動産の所有権は、遺言者の死亡とともに受遺者に移転することになりますが、受遺者がその物件の占有を取得するためには、「引渡し」が必要になります。

 それでは、遺贈による権利取得について、登記なくして第三者に対抗できるのかについて説明します。
判例は、特定遺贈の事案において、遺贈も意思表示によって物権変動の効果を生じるものであるため、遺贈による権利取得を第三者に対抗するためには登記を具備することが必要であるとしています(最二小判昭和39年3月6日民集18巻3号437頁、最三小判昭和46年11月16日民集25巻8号1182頁)。特定遺贈については、上記のとおり、遺言の効力発生時に財産が譲渡されるイメージであるため、この結論は理解しやすいのではないでしょうか。他方で、包括遺贈については、上記のとおり、相続人と同一の権利義務を有するとされていることから、相続と同様に考える余地もあります。しかし、一般的には、特定遺贈と同様、登記なくして第三者に対して対抗できないとされています(東京高判昭和34年10月27日判時210号22頁、東京地判平成9年8月20日判タ990号232頁)。
従って、包括遺贈でも特定遺贈でも、遺贈による権利取得を第三者に対抗するためには、原則として、登記を具備することが必要になります。具体的な登記手続としては、包括遺贈、特定遺贈の場合ともに、登記原因を「遺贈」とし、受遺者を登記権利者とし、遺言執行者又は相続人を登記義務者として、共同申請を行う必要があります。

 以上を前提に、CASE1について検討します。
Aの遺言は、特定の不動産である甲不動産をDに遺贈する内容ですので、特定遺贈になります。そのためDは、Aの死亡とともに甲不動産の所有権を取得することになりますが、上記判例に照らすと、DはEよりも先に登記をしなければ、Eに対してその所有権を対抗することができません。従って、CASE1の場合、Eが先に登記を具備していますので、Dは、原則として、Eに対して甲不動産の権利取得を対抗できないことになります。

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熊本 健人

学習院大学法学部卒業
神戸大学法科大学院修了

アーレスリアルエステート

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