第52回 限定承認

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江幡 吉昭

2020-06-05

第52回 限定承認

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前回は「相続放棄」についてお話しました。
相続放棄をするケースとしては、マイナスの財産がプラスの財産より多い場合や家族全体のことを慮(おもんぱか)って・・・などがありましたね。
また、相続人全員が相続放棄をしたらその財産はどうなってしまうのか?なども解説しました。
今回は、“相続するけど条件付きで”という「限定承認」のお話です。

どんなときに限定承認を検討する?

被相続人に多額のマイナスの財産があると分かっていれば、相続放棄を選択することでそのマイナスの財産を引き継がずに済みます(ただし、連帯債務者には責任が及びますので注意が必要です)。しかし、被相続人の財産状況によっては、相続人が一度、相続放棄をしてしまえば、自宅などを失ってしまう可能性もあるわけです。そこで登場するのが「限定承認」という制度です。
限定承認について名前は聞いたことがあるけど、よく分からないという方もいらっしゃるでしょう。ここで、裁判所のホームページに記載されている限定承認についての説明を見てみましょう。

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(限定承認とは)被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ(こと)<裁判所ホームページより>
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つまり、「相続した財産の中にプラスの財産とマイナスの財産があったとしても、プラスの財産を限度にマイナスの財産を相続(=精算)すればよい」ということなんです。仮にマイナスの財産の方が多かったとしても「その差分を相続人自身の財産から持ち出す必要はない」ので相続人にとって不利益がないということになります。

「それなら相続が発生したら、みんな限定承認を選択するんじゃないの?」

と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
確かに、単純承認した後に、誰も知らなかったマイナスの財産が出てきた、なんてことがあっても、一度意思表示した単純承認を限定承認に変更することは原則できませんので、そんなことになったら目も当てられません。相続開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、被相続人の財産のすべてを把握できればいいのですが、被相続人が終活の中で財産の一覧をまとめていればまだしも、一切管理も行っていなかった場合、それを把握する作業は容易ではありません。そして、あっという間に3ヶ月が過ぎてしまいます。もし、プラスの財産の方が多いのか、それともマイナスの財産の方が多いのか、その把握が間に合わない、断定できないし不安、ということであれば、家庭裁判所に限定承認の申述をしておけばよいということになります。

デメリットが大きく、実際はあまり活用されていない

そうすれば、後々、多額のマイナスの財産が出てきても安心・・・なのですが、ここで限定承認のデメリットも見ておきましょう。実は、デメリットが大きいため、限定承認は実際の相続の現場ではあまり活用されていません。ここでは大きく分けて4つのデメリットを示します。

デメリット①:限定承認は相続人全員で行う必要がある
限定承認は相続人単独で行うことができません。一人でも反対する相続人がいるときは、限定承認の申述をすることができないのです。

デメリット②:債務の清算に手間がかかる
マイナスの財産をプラスの財産の範囲内で精算するわけですから、相応の手続きが発生します。家庭裁判所の手続きにしたがって行うことになりますが手間と時間がかかる、というわけです。一方で、相続放棄を選択すると、そもそも相続人ではないことになるので、清算手続きが発生しません。この精算手続きが面倒なため、マイナスの財産があると分かった時点で相続放棄を選択している相続人が多い、とも考えられます。

デメリット③:被相続人に譲渡所得(所得税)が課税される
どうして被相続人に税金が発生するの?と思いますよね。詳細は割愛しますが、制度上、限定承認を選択すると、その財産は相続ではなく相続開始時に相続人にその時の時価で譲渡したとみなされ、被相続人がその財産を取得したときよりも時価が上がっていれば譲渡所得が発生することになります。当然、所得があれば税金(所得税)を納めなければなりません。その場合は、「準確定申告」をする必要が出てきます(これは相続人が手続きをすることになります)。相続なのに所得税という余計な税金が発生する可能性があるのです。

デメリット④:相続税の特例制度を適用することができない
限定承認をすると、すべての財産は譲渡されたものとみなされるため、小規模宅地等の特例といった相続税の特例制度を受けることができなくなります。小規模宅地等の特例とは、「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等(特定居住用宅地等)は330㎡までは相続税が80%減額される」というものでしたよね。これが受けられなくなるのは非常に大きなデメリットになります。場合によっては、仮にマイナスの財産があっても限定承認をせずに単純承認を選択して特例を適用すれば、その税金の減額分でマイナスの財産を返済できてしまうケースがあるかもしれません。

限定承認まとめ

最後に、家庭裁判所の統計で限定承認の実情を見てみましょう。

<家事審判・調停事件の事件別新受件数>
相続の限定承認の申述受理:722件
相続の放棄の申述受理:205,909件
(※平成29年度司法統計『家事手続案内件数 全家庭裁判所』より)

こうみると、限定承認は相続の現場ではほとんど活用されていない現状が分かります。しかし、ゼロではありません。メリットとデメリットをしっかり検討しながら判断することになります。単純承認、限定承認、相続放棄、いったいどれを選択すればいいんだろう・・・財産の状況によっては、相続開始後3ヶ月以内に決めることは困難でしょう。早い段階から専門家に相談することをおすすめします。

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江幡 吉昭

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