第20回 新たなデジタル遺言制度(保管証書遺言)

第20回 新たなデジタル遺言制度(保管証書遺言)

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今回は新たなデジタル遺言制度の案(保管証書遺言)についてご紹介します。

1 現行の遺言制度

現行制度では、遺言について厳格な方式が定められています(民法第960条)。これは、主に遺言者の真意を確保し、遺言書の偽造・変造を防止し、遺言者に慎重な考慮を促すためです。
たとえば、自筆証書遺言では、遺言者が、遺言書の全文(財産目録を除く。)等を自書し、これに押印することが必要です(民法第968条第1項)。
※ 過去の記事
https://egonsouzoku.com/magazine/magazine-38/
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https://egonsouzoku.com/magazine/magazine-65/
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2 遺言制度のデジタル化の検討の経緯

①高齢化の進展や単身の高齢者の増加、また、②所有者不明土地問題等の社会課題を解決する観点から遺言者の最終意思の実現手段である遺言の重要性が高まっていること等から、デジタル技術の進展、普及等に応じた遺言の方式等が検討されています。
本原稿執筆時現在において、法制審議会による「民法(遺言関係)等の改正に関する要綱案」(以下、「要綱案」といいます。)が公表され、今後、国会による審議等を経て法令が成立・施行される予定です(今後、制度内容が修正される可能性はあります。)。
要綱案は、自筆証書遺言等の従来の遺言の内容も含んでいますが、本記事では、主にデジタル技術を活用した新たな遺言方式(保管証書遺言)をご紹介します。

3 保管証書遺言の位置づけ

自筆証書遺言等の従来方式とは別に、保管証書遺言という新たな方式が設けられることになりました。
これは、デジタル技術を活用することが困難な方がいないとはいえず、遺言をしようとする方にとって幅広い選択肢が存在することが望ましいと考えられたためです。

4 保管証書遺言の概要

保管証書遺言は、遺言の全文等が記録された電子データが、公的機関により保管され、かつ、公的機関で申請者が本人であることとその真意が確認されることにより、遺言する方式であり、その概要は以下のとおりです。
なお、電子署名の方法、電子申請の方法、ファイル形式・様式、本人確認資料等の詳細は、今後法務省令で定められることが想定されています。

⑴  遺言書の作成
・ 遺言者本人がパソコンなどを利用して、遺言の全文の電子データ(又は印刷された書面)を作成し、署名又は署名に代えた電子署名を実施

⑵  保管の申請
・ 遺言者本人が、法務局に対して、その電子データ又は電子データを印刷した書面の保管を申請

⑶  本人確認・口述
・ 原則として、遺言者本人が出頭し、本人確認資料(マイナンバーカード等の顔写真付きの資料が想定)の提示等により、法務局の遺言書保管官が、対面で本人確認を実施
・ 原則として、遺言者本人が、遺言書保管官の前で、遺言の全文を口述(口頭で読み上げ)
・ 遺言者本人の申出があり、かつ、相当と認められるときは、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法(ウェブ会議等が想定)により、本人確認・口述の実施が可能
・ 遺言書保管官は、遺言者の周囲に介助者、機器の操作補助者以外の他人がいないことを求め、遺言者の周囲に介助者、機器の操作補助者以外の他人が存在することなどがうかがわれる場合には、ウェブ会議の利用を中止し、遺言者に出頭させるという運用が想定

⑷  保管の手続
・ 電子データが遺言書保管ファイルに記録(書面による場合は遺言保管書の施設内に保管)

⑸ 保管制度等
・ 遺言者による閲覧請求等
・ 相続人等による交付請求等
・ 相続人等に交付がされた際に、他の相続人等に対する通知
・ 遺言者が指定する者に対する保管証書遺言書を保管している旨の通知
・ 検認不要
・ 遺言者による保管の申請の撤回

5 自筆証書遺言との違い

要綱案では、自筆証書遺言について、従来は必要とされていた押印が不要とされています。この点は保管証書遺言と同様です。
しかし、自筆証書遺言は全文等の自書が必要であり、本人確認や口述等の手続は必要とされていません。
また、現行の制度でも、既に自筆証書遺言書保管制度があり、紛失・改ざんの防止及び相続人等への通知が可能ですが、この利用は任意であり、自筆証書遺言に必須ではありません。
このように、自筆証書遺言には自書が必要である一方で、本人確認、口述及び保管の手続が不要であることが、保管証書遺言と大きく異なります。

6 公正証書遺言との違い

令和7年10月1日から、公正証書の作成手続きがデジタル化されており、公証人が相当と認める場合のウェブ会議の利用、電子データでの公正証書の作成が原則になる等のデジタル化が実施されています。
しかし、公正証書遺言には公証人及び証人の関与が必要であることは従前と同様であり、この点が保管証書遺言と大きく異なります。

7 まとめ

保管証書遺言は、自書が不要であり電子データの利用が可能であるなど、遺言作成の手間が少なくなる面があり、自筆証書遺言等の従来方式と異なる新たな方式・選択肢である一方で、本人確認や口述、保管手続等も必要になるため、従来方式よりも全ての面で、簡便で手軽になるとは言い難い面があります。
これから遺言をしようと考えている方にとっては、遺言制度の趣旨・方式を十分に理解して、ご自身の状況に適した遺言の方式を選択し、その方式を満たすようにして、有効な遺言をすることが重要です。


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弁護士

早稲田大学法学部卒業
早稲田大学法科大学院修了

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