第7回 遺留分減殺請求

第7回 遺留分減殺請求

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前回は、「遺産を全て愛人に相続します」など、法定相続人以外などに財産を相続させるという遺言があった場合の遺留分について、その権利者と割合についてお話ししました。兄弟姉妹には遺留分が認められていない、これがポイントでしたね。

今回は遺留分権利者はどのようにして遺留分を主張するのか、というお話です。
まず、皆さんは「遺留分を侵害するような内容の遺言は無効となる」ということはもう理解されていますね。しかし、実は遺留分を主張する権利には期間の制限があります。つまり、遺留分はいつでも自動的に適用されるわけでないのです。遺留分を主張する権利がなくなると、結果的には遺言通りに相続が行われます。例えば「(配偶者や子どもにではなく)愛人に全財産を相続させる」という遺言を残したケースの場合では、遺留分権利者が一定期間内に遺留分の請求をしなければ、当然にその全額が愛人に相続されることになります。半分とはいえ請求すれば取り戻せるはずだった財産がゼロになってしまうのです。とても恐ろしい?話ですが、これはきっちりと法律で決まっていることなのです。
それではさらに詳しく見ていきましょう。
まず、遺留分権利者(及びその承継人)が遺留分の権利を行使することを「遺留分減殺請求」といいます(民法1031条)。この権利は、遺留分権利者から相手方に対しての一方的な意思表示によって行使することができます。つまり、相手(上述の例でいえば愛人。あるいは遺言という形の被相続人の意志も含みます)がどう思おうがそれに関係なく請求できます。それはそうですね、相手方の拒否権があったら遺留分の根底が崩れてしまいますから。
次に、請求方法です。遺留分減殺請求は口頭でも有効です。また上述の遺言で例えると、配偶者や子どもが愛人に向かって「遺言でなんて書いてあろうと遺留分は請求しますからね」と電話で伝えても有効です。
とはいえ、いつの時代にも「言った、言わない」の問題が発生しますね。口頭で伝えるだけでは証拠が残らないので、内容証明郵便などにより書面で通知する方法が一般的です。そこから相手方と話し合いをして、具体的な相続分を決定していきます。しかし、相手側が話し合いに応じなかったり、話し合ったけれども具体的に相続分が決まらないこともありえます。その際は弁護士に依頼したり、家庭裁判所に遺留分減殺調停を申し立てたりすることになります。さらに調停でも折り合いがつかない場合は、いよいよ遺留分減殺訴訟となります。裁判となるとそれなりの日数も費用もかかりますし、精神的にも重くのしかかってくることでしょう。そう考えると、やはり、そもそも被相続人が相続問題が起こらないための「終活」を早い段階でスタートすることが必要です。
さて、最後に請求できる期間です。
この請求期間について注意が必要なのです。民法1042条で遺留分減殺請求権の請求期間の制限について「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする」と規定しています。つまり、被相続人が死亡したことを知らなければ10年間ですが、これは特殊な例であって、基本的には1年以内に請求しないといけないのだな、と考えればいいですね。相続問題でバタバタしていると1年という月日はあっという間だという話をよく聞きます。遺留分を主張するのであれば、その主張する内容を確定するのにも時間がかかることでしょう。そう考えると「1年」は本当に短いのかもしれませんね。

今回は判例の紹介の代わりに、遺留分減殺請求書のサンプルを紹介しますね。

第7回 遺留分減殺請求の画像

これを内容証明で相手先に送付すれば、請求の第一歩は終了です。あとは相手側の出方をうかがうことになります。遺留分という権利があるとはいえ実際に回答が得られるまでは緊張の毎日となりそうですね。
残された家族にこのようなトラブルが起こらないように、今すでに終活を進めている人もこれから始める人も、自分の死後このような文書が飛び回るような相続にならないよう心掛けないといけませんね。
 

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