第22回 遺留分は原則“お金”で精算!モノ(不動産等)で精算すると…

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油良 俊寛

2021-01-29

第22回 遺留分は原則“お金”で精算!モノ(不動産等)で精算すると…

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民法(相続法)改正によって遺留分がどうなった?

今般の民法(相続法)改正により
①遺留分を侵害している場合、“お金で精算すること”が原則になりました。
「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求(=金銭請求権)」に変更。
②不動産などのモノで遺留分を精算する場合、譲渡所得税が課税される形になりました。(改正前は、譲渡所得税の課税は生じないとされていました。)

この改正によって、遺留分の精算にあたっては“不動産を共有名義にする必要がなくなる”といった問題解決の一方、もしお金ではなくやむをえず不動産で精算する必要がある場合には、譲渡所得としての課税が生じることになりました。民法上は分かりやすくなった一方、税務上はややこしくなったといえます。

モノでの精算は「代物弁済」となり譲渡所得の対象に

お金で精算することが原則とはいえ、金額が大きく、お金を用意できない場合、不動産などのモノで精算することもあるでしょう。しかし、これは民法上の「代物弁済」にあたるとされています。

金銭の支払いができない ⇒ モノ(不動産等)での支払いに代えて弁済 ⇒ モノ(不動産等)を売却してお金にして渡したのと同じ ⇒ 代物弁済に該当

とイメージしていただければ分かりやすいかと思います。
税務上、代物弁済は“譲渡”に該当するため、譲渡所得の課税対象になります。
二重課税では?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、相続や遺贈とは別のものとして扱われ、譲渡所得の課税対象と整理されています。
相続した財産には相続税が、遺留分の清算を(モノで)した場合には、その財産は譲渡したことになるので譲渡所得税が別々に課せられることになるのです。

“財産の大半が不動産”といった場合には要注意

財産の大半が不動産といった場合は、遺言や遺産分割にあたっては注意が必要です。遺留分には特に配慮する必要があります。
以下、事例で見てみましょう。

■被相続人は父親、相続人は長男と長女の2人。
■長男、長女の遺留分はそれぞれ4分の1(=法定相続分2分の1×2分の1)
■父は生前に「全財産を長男に相続させる」とする遺言を作成していた。
■長女はその遺言に納得がいかず、長男に対して遺留分を請求した。(これを遺留分侵害額請求といいます。)
■父親の遺産は、自宅の土地・建物のほか、土地が2つ。現預金などの金融資産は大してなく、ほとんどが不動産であった。
■遺留分の請求を受けた長男は、遺留分相当額のお金を持っておらず、やむなく父親の所有していた土地の一つを遺留分として長女に渡すことにした。

上記のようなケースは十分にありえるでしょう。
この場合、いったん長男がその土地を売却し、売却分の金額を長女に渡したうえで、長女がその金額でその土地を買った、とみなされます。実際に土地の売却・購入などの手続きがなくても、遺留分のやりとり上ではあったことになるのです。

例えば、その土地の評価額が1000万円の場合、長男が1000万円で土地を売却したとみなされ、長男の譲渡所得になり、長男に譲渡所得税が課せられます。一方、長女の方にも1000万円で土地を買ったとみなされるため、不動産取得税や登録免許税が課せられることになります。不動産取得税や登録免許税も結構な金額になりますので、税金的には良いことなしですね…

遺言が遺留分を侵害する内容だったら?

相続が発生して見つかった遺言の内容が遺留分を侵害している場合、上記のような譲渡所得を回避するにはどうすればいいのでしょうか。
(遺言による受遺者が法定相続人だけの場合に限り)相続人全員の同意があれば、遺言と異なる遺産分割協議をすることが可能ですので、協議が成立すれば遺留分を侵害しない分割内容に変更することもできますし、取得原因が“相続”となるので、譲渡所得に対する課税を回避することができます。

このように譲渡所得課税を避けるためには、遺言作成あるいは遺産分割協議の際には遺留分に十分配慮する必要があります。もし、遺留分を侵害する内容の遺言が見つかった場合は、その後の対応について専門家に相談することもご検討ください。

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税理士

監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)にて東証1部上場の大手商社などの金融商品取引法監査に従事
税理士法人ゆびすいにて相続税、法人税、所得税など各種税務案件に従事
2017年アステルフォース税理士事務所を開設、資産税を中心に活動し現在に至る
株式会社アレース・ホールディングス取締役

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