第21回 令和三年度税制改正大綱を受けて

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油良 俊寛

2020-12-15

第21回 令和三年度税制改正大綱を受けて

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令和三年度税制改正大綱を受けて

12月10日に「令和3年度税制改正大綱」が発表されました。住宅ローン減税など一見、結果だけ見れば相続に関する内容はあまりありませんでした。しかし、将来的に大きな変更が推定される内容だったのでこの話題を取り上げたいと思います。

1. 令和3年度税制改正大綱をうけて
それは税制改正大綱が発表される前段、今年の政府税制調査会で何度もある議題が取り上げられました。それは「贈与税と相続税の一体課税」についての議論です。内容としては『相続税と贈与税の一体化』です。少しだけ議事録の内容の一部を見てみましょう。
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現在の税率(相続税)構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。
今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度(贈与税)のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。
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要は、「現行のような毎年110万円前後、生前贈与するということで相続税を節税するというような現実は見直すべき」ということです。贈与をコツコツしても相続のときに再度課税されるような制度へ変更、つまり実質的な増税がなされる可能性があると考えるのが自然でしょう。格差是正という大義名分があるので世間的にも受け入れやすい話でしょう。

2.相続・贈与税は増税方向へ
今まで、海外不動産の減価償却もそうでしたが、政府税制調査会で議論になった数年後に『納税者にとってフタがされる』ことがしばしば起こります。もちろん今回の贈与の話に関して、具体的なことは記載されていません。また、こういった議論の後も、国税のシステム改修も含めて様々な調整が必要になるでしょう。よって数年程度の猶予期間はあると思いますが、今後相続・贈与に関して増税方向の大きな変化は覚悟しておかなければならないでしょう。

3.少子高齢化が相続税の増税を促す
それでは、なぜこういった相続税などが増税の方向になるのでしょうか?それは少子高齢化で、特に20‐64歳までの生産年齢人口は1990年代半ばを境に日本のみ右肩下がりになっています。その右肩下がりは今後も減少傾向が続きます。生産年齢人口の減少とは働き手の減少ですから、所得税や法人税は上げられません。そこで上げられるのは資産を持っている人から徴収する相続税というわけです。(消費税も同様、上昇傾向でしょう)また、相続税の増税は制度的には簡単に実施できます。基礎控除を引き下げるだけで実質的な増税が可能なのです。皆さんがご存じの基礎控除(3000万円+法定相続人数×600万円)は一言で言えば、これ以上の遺産があると相続税がかかりますので、実質的な『相続税がかかる最低限のバー』と言えます。このバーを下げるだけで相続税の納税者を増やすことが可能なわけです。事実、2015年に相続税の大増税があり、基礎控除が5000万円+法定相続人数×1,000万円から上記3000万円+法定相続人数×600万円に引き下げられたのは記憶に新しいところです。(結果、相続税を払う人は4%から8%へ倍増しました)

4.専門家に相談を
とはいえ、相続税が安くなるような特例は、居宅に関しては今後も残り続けるでしょう。とはいえある程度の資産を保有している地主さん、会社経営者、一流企業のサラリーマン、医師含めた士業の方や、都内30坪戸建てを保有しているような方は、今後の増税に備えてきちんと専門家に事前に相談する必要があるのではないでしょうか。

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税理士

監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)にて東証1部上場の大手商社などの金融商品取引法監査に従事
税理士法人ゆびすいにて相続税、法人税、所得税など各種税務案件に従事
2017年アステルフォース税理士事務所を開設、資産税を中心に活動し現在に至る
株式会社アレース・ホールディングス取締役

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