第61回 具体的事例『近隣住民のいやがらせで相続税が払えない?!』

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江幡 吉昭

2020-10-09

第61回 具体的事例『近隣住民のいやがらせで相続税が払えない?!』

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今回のケースは母親が亡くなって、子供3人(長男、次男、長女)が母親の自宅を相続したことから始まります。
都内のとある住宅地での出来事です。大きさは80坪程度の土地。母親がかつて住んでいた家屋はもう築40年以上でかなり古くなっている木造一軒家でした。
そして母親の相続税が700万円くらいかかるということがわかったものの、母親の遺産はほぼ自宅のみで現金はあまり残っておりません。そこで、子供たち3人はそれぞれ自宅を持っていますし、母親の自宅を売って、相続税を払おうかと言う話になりました。しかし、ここで問題が起きました。

子供たちの間での遺産分割協議では
・分筆して80坪は3等分にすること
・売る売らないはそれぞれ相続した人の判断だが、基本3人とも売却の方向
でした。

80坪の土地自体は角地であり、分筆すると1つは角地、のこり2つ前面道路が私道と言う状態になりました。(以下図をご参照ください)
その私道に関して母親が持ち分をもっておらず、次男の土地と、長女の土地が無道路地と言う状態になることが分かったのです。これでは道路がない状態なので土地が売れません。

第61回 具体的事例『近隣住民のいやがらせで相続税が払えない?!』の画像

土地を売却するに際し、不動産屋が調べて初めてわかったのです。
さらに、もう一つ大きな問題があったのです。それは水道です。
もともと母親の自宅には水道を引いています。3つに分けるのにあたって、長男の土地は公道から水道をひけばいいのですが、次男と長女は私道。そこで道路を挟んで正面にいるAさんに次男長女が言います。
『こちらの負担で道路を掘りますので、水道管つなげてもいいですか?』と言ったところ
なんとAさんが拒否したのです。そこで次男長女が、『お礼(お金)を払うのでなんとかお願いします。』と頼み込んだものの、Aさんは『お金をもらっても嫌だ』といいだす始末。当初は一人30万円前後もらえるのであれば、水道管をつなげてもいいというAさんの話だったのですが、話がこじれて行ってしまったのです。

結局、Aさんは態度を硬化し、次男長女も八方ふさがりとなります。これでは土地も売れないので相続税も期限内に支払えないのではないか?という話になり、次男・長女は更に譲歩します。2人はAさんに『私道を少し売って我々の持ち分にさせてくれませんか?』と頼み込みます。しかし結論はダメ。ついにはAさんは
『水道のために私道を掘ることはおろか、そもそも私道を勝手に通ってもらっても困るんだ!』と言い出したのです。そこで2人が相談したのが向いに住むBさん。次男と長女は私道の持ち分を少しBさんから売ってもらうことが出来たのです。気のいいBさんのおかげで、水道を引くことができるようになり、また私道の持ち分も少し譲ってもらったので通行することもできるようになり、無事に建売業者に土地を売ることができるようになりました。Aさんからすれば、変に嫌がらせなどせずに、素直に2人から2-30万円もらっておけば良かったのにという話です。

一般的には意外と知られていないのは、地下を走っている水道をどう引き込むか?引き込めなければ売れないこともあります。また、その土地の前面道路はなんなのか?ということが土地の価値を変化させます。基本、こういった通行掘削(つうこうくっさく)は売り主側でやらなければなりません。全部買主に任せたいところですが、一般的にはそうも行きません。前面道路公道であれば問題ないですが、私道の場合権利関係や持分の有無によって、売りたくても売れない場合がありますので、相続発生前に『この土地を売って相続税の足しにすればいい』というお考えの方は事前に専門家に相談することも大事かと思います。

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江幡 吉昭

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