第2回 遺言作成の事例紹介

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貞方 大輔

2020-07-03

第2回 遺言作成の事例紹介

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今回は遺言作成の事例紹介をいたします。
相談者のA子さんは、夫Bさん(現在、認知症で介護状態)が創業したZ社の社長を今年3月まで務めていました。今回、会長職就任を機に経営の第一線から離れることとなり、ご自身の相続ならびに事業承継に不安を持たれたことでご相談いただきました。

お客様の背景

<登場人物>
■現会長A子さん
■前会長Bさん(A子さんの夫、創業者)
■現社長C子さん(A子さんの長女)
■子D、E、F、G(A子さんの子供たち)

<経緯・背景>
■前会長Bさんが40年前に創業した内装業社Z社。
■Bさんは、健在なるも認知症が進んでおり、相続対策ができない。
■A子さんは創業時からBさんとともに、Z社を支えてきたが、高齢化による足腰の衰えもあり、経理担当をしていた長女C子さんに社長職を任せて、会長に就任。
■A子さんからZ社への貸付金が約7,000万円あり、それに見合う法人資産がないことからA子さんへの返済は不可、かつ、税務上の損失は約1,000万円程度につき、債務免除による解消も困難。※もし仮に税務上の損失が多額にあったならば、債務免除による益金算入で解消(相殺)できた。

この貸付金も、A子さんの相続発生時には相続財産となることから、Z社の事業継続、相続争いの回避を目的に遺言作成の依頼があった。

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A子さんのご意向

■夫Bさんが創業し、二人三脚で成長させたZ社の事業継続はC子さんにして欲しい。
■資産は多くはないが面倒を見てくれているC子さんに多く残したい。
理由:経理を20年以上見てくれて、会社近くのA子さんの自宅で6年前から介護状態の夫Bさんの面倒もC子さんとC子の夫(Z社役員)が仕事の傍ら見てくれているため。
■兄弟姉妹仲良く暮らしてほしい。

A子さんの相続予定財産

■預貯金3,000万円
■法人への貸付金7,000万円
■生命保険2,500万円
■不動産として、長野県のA子さんの実家の土地建物があるが価値はない。
以上、生命保険を除き、相続財産の合計は1億円。

遺言内容

「長女C子に相続財産の1/2を相続させ、残り1/2を相続開始時の相続人(C子を含む)に法定相続分の割合で相続させる。」

遺言内容の検証

遺言による上記財産の相続割合(内訳)は以下のとおりとなります。

ケース①:夫Bさん存命中にA子さんが死去
■長女C子さん:1/2(遺言分)+1/2×1/2×1/5=11/20 ⇒1億円のうち5,500万円
■夫Bさん:1/2×1/2=1/4=5/20 ⇒1億円のうち2,500万円
■D、E、F、G各々:1/2×1/2×1/5=1/20(4人で4/20)⇒各々500万円、計2,000万円

ケース②:夫Bさん死後、A子さんも死去
■長女C子さん:1/2(遺言分)+1/2×1/5=6/10 ⇒1億円のうち6,000万円、
■D、E、F、G各々:1/2×1/5=1/10(4人で4/10)⇒各々1,000万円、計4,000万円

※ケース①と②どちらも、C子さん以外の相続人の遺留分は侵害していない。

入念な対策:「付言事項」の記載

C子さんは兄弟との関係が疎遠であるとのお話を受け、相続争い防止のためにも付言事項の記載をご提案し、A子さんは以下のとおり遺言に書かれました。

「(付言事項)
みんなには大変感謝しています。
財産は多くはないけれど、それぞれに少しずつ分けました。
C子に多く分けましたのは、会社の存続のためです。
私の財産は、会社の業績が悪い時に私から貸し付けた貸付金が、大半を占めます。
会社の業績が急激に良くなる見込みはなく、実質的な資産ではないと考えますが、相続財産となるため会社存続のためと思って、受け入れてください。
どうか兄弟同士争わずに最後まで仲良く暮らしてください。」

付言事項とは、遺産の処分などの法律行為以外のことで言い残したいことを書くことです。何を書いても問題ありません。付言事項によって“なぜそういう遺言をしたのか”家族への想いを伝えることができます。よって、遺言の内容が格段に濃いものになり、相続争いを防ぐことにもつながるのです。必ず書くようにしましょう。

最後に

A子さんは、ご自身の父母、夫Bさんの父母の相続手続きをご自身でされて、ほとほと疲れたご経験をお持ちであったこと、長女C子さんへの配慮から、遺言執行者を、当協会(相続終活専門協会)に依頼されました。
A子さんからは、「大まかな道筋ができ、安心して暮らせます」とのお言葉がありました。(ちなみに、A子さんはZ社の株式の過半数をお持ちでしたが、数年前からC子さんに譲渡しており、来年には完了する予定です。)

遺言作成に関するご相談、ご依頼などがありましたら、お気軽に当協会へご連絡ください。

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貞方 大輔

立命館大学卒業後、大手生保を経て、アレース・ファミリーオフィスへ入社。
一般社団法人相続終活専門協会 代表理事

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