第2回 なぜ、高齢者は認知症を引き金に問題を起こす傾向にあるのでしょうか

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佐藤 俊彦

2018-04-23

第2回 なぜ、高齢者は認知症を引き金に問題を起こす傾向にあるのでしょうか

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認知症が引き金になるトラブルについては、前回にも少しお話をしました。なぜ、高齢者はこのような問題を起こす傾向にあるのでしょうか。
 脳はそれぞれの部位で機能が異なります。これを医療では機能局在といいます。「大脳機能局在」で検索をすると説明の画像がでてきますのでご参考ください。では話を戻しましょう。脳は前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉に大きく分類されます。前頭葉の働きは、感情や意思計画、失語、頭頂葉は高次認識機能、つまりは記憶、思考、注意など、後頭葉は視覚に関連し、側頭葉は、言語の認知を司ります。

 例えば、祖母や祖父が高齢になってから万引きをする、あるいは注意をしても万引きを繰り返す場合、頭頂葉や前頭葉がダメージを受けている可能性があります。また、暴言を吐くなどの行為が出現した場合には、前頭葉型の認知症である可能性があります。ですが、彼らには自分が認知症という病識がありません。だからこそ、車を運転できると思っているし、注意をされることを拒む訳です。しかし、これは、既に立派な認知症なのです。

 日常生活ができる、認知症の検査である長谷川式の点数はボーダーライン。このような方であっても、前回説明した意思能力鑑定によってその程度を解明することが可能です。その一つが画像診断検査機器です。
 皆さんやあるいはその家族が認知症を心配し受診をした際、どのような検査を基に結果説明があるのが望ましいのでしょうか。長谷川式検査、MMSE検査、脳のMRI検査・・・。答えは脳のFDG-PET検査です。脳はブドウ糖を唯一の主成分として活動しています。FDG-PETで使用する薬剤の主成分はブドウ糖です。つまり、薬剤の取り込みが低い部位は脳に代謝低下が起きており、そこに障害があるということが画像を通して分かるという訳です。
 では、MRI検査はどうなのでしょうか。MRIは脳の形態を画像化します。脳に萎縮がおこっているような状態に至らないとMRI画像から指摘ができないということです。つまりMRI検査のみを受けて異常がないですよと医師が説明したとしても、FDG-PETでは異常が指摘される可能性が十分にあるということで、MRIで異常が指摘された場合には、かなり痴呆が進行した状態であるということです。
 補足ですが、MRIは保険が適応されていますが、PETは保険収載されておらず全額自費負担となります。しかし、わたしは放射線科医として常々、認知症の早期発見のためにFDG-PET検査を受けてくださいといっています。なぜなら本検査では軽度の認知症の段階、すなわち認知症の芽を可視化でき早期発見につながるからです。

 先ほど軽度の認知症と述べましたが、これを「MCI」と言います。MCIの状態で発見し、早期に何らかのケアをすることができれば、半数以上の方が正常に戻れるというデータがあります。一方で、MCIを放置した場合には認知機能の低下が進み、5年間で半数程度の人が認知症になると言われています。
 FDG-PETでMCIの状態でみつけてコントロールすることが重要なのです。是非、これから遺言作成をと検討されている方は係争を未然に防ぐため、意思能力鑑定の一つとして本検査をお受けになることを推奨します。 

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