今回は、数次相続が生じた場合の登記手続きについてご説明します。
※ 相続と登記に関する過去の記事
https://egonsouzoku.com/magazine/magazine-755/
https://egonsouzoku.com/magazine/magazine-778/
https://egonsouzoku.com/magazine/magazine-1472/
https://egonsouzoku.com/magazine/magazine-204/
1 数次相続
不動産所有権の登記名義人の死亡により相続が開始したものの、その相続による所有権移転の登記がなされないうちに、その相続人が死亡してさらに相続が開始した場合を、実務上「数次相続」と呼んでいます。
たとえば、10年前に土地(以下、「本件土地」といいます。)を所有していた母Aが死亡し、相続人間の遺産分割協議により父Bが本件土地を単独相続することになったが、その相続による所有権移転登記が未了のうちに、父Bが死亡し、遺産分割方法を指定した「相続させる」旨の遺言により子Cが本件土地を単独で相続するというケースは、母Aから父Bへの相続(1次相続)、父Bから子Cへの相続(2次相続)が発生しており、数次相続と呼ばれます。
2 原則に従った手続き
⑴ 不動産の権利関係の変動過程を忠実に示すという不動産登記法の理念に従うと、まず第1次の相続による登記をし、次いで第2次以後の相続による登記を順次行うことになります(不動産登記令4条参照)。
⑵ 上記のケースでは、土地について、母Aから父Bへの相続による所有権移転登記を行い、さらに父Bから子Cへの相続による所有権移転登記をすることになり、複数回の登記申請が必要です。
3 登記実務上の取扱い
⑴ しかし、登記実務上、数次相続の場合に、中間の相続登記を省略して、最終の相続人への所有権移転登記が認められる場合があります。
中間の相続が単独相続である場合に限り(最終相続は共同相続でも問題ありません。)、登記原因及びその日付を連記したうえで、1件の登記申請書で、第1次被相続人である登記名義人から最終の相続人名義に直接相続登記を申請することができるものとされています(昭和30年12月16日民事甲2670号民事局長通達)。
これは、中間の相続が単独相続の場合に、中間の相続登記を省略して、直接最終の相続人のために相続による所有権移転登記を認めても、公示上の混乱を来すおそれがあるとはいえず、かつ、登記事務の簡素化のメリットがあるためです。
なお、ここでいう「単独相続」には、遺産分割、相続放棄又は他の相続人に相続分のないことによる単独相続を含みます。
また、最終の相続人が複数の場合でも、通常の相続登記の場合同様、相続人全員又は相続人のうちの1人が保存行為として、上記相続登記手続きをすることができます。
⑵ 他方で、中間の相続が単独相続でない場合には、原則とおりに相続による登記を順次行うことが必要です。
⑶ 上記のケースでは、1次相続(中間の相続)である母Aから父Bへの相続は(遺産分割協議による)単独相続であるため、本件土地について、中間の相続登記を省略して、母Aから子Cへの相続による所有権移転の登記を行うことが可能です。
4 まとめ
遺言者の真意に基づく作成の確保、遺言書の偽造・変造の防止及び遺言者の慎重な考慮の促進という観点等から、以下の例を含め、遺言の方式の在り方を引き続き検討するものとされています。
(1) 遺言の本文(内容)に相当する部分として取り扱う電子データの例
① 文字情報等の可読性のある電子データ(自書した書面のスキャンデータ、ワープロソフト等で入力されたデータ等)
② 録音・録画の電子データそれ自体等
(2) 本人の意思に基づく作成を担保する方法(偽造・改ざんの防止)の例
① デジタル技術(電子署名(マイナンバーカードの利用等)、生体認証技術(顔・指紋認証等)、録音録画の電子データ等)
② 証人の立会い
③ 保管制度(保管の申請時に本人確認を実施する等)等
※ その他、遺言作成後の変更・撤回の在り方等も検討されています。
5 まとめ
上記のように、数次相続がある場合に、中間の相続を省略した手続きが認められる場合があります。
令和6年4月1日より相続登記申請が義務化されましたが、相続登記がされていないケースが散見されます。
この中間の相続を省略する登記手続きは、相続登記義務に対応する際に役立つ可能性があります。専門家に相談し、登記実務を確認する等により、事案に即した適切な手続きを行うことが望ましいと言えます。
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