第8回 相続放棄者の相続財産保存義務(その2)

 イメージ

山下 昌彦

2024-06-06

第8回 相続放棄者の相続財産保存義務(その2)

  • sns_icon01

前回のおさらい

第8回 相続放棄者の相続財産保存義務(その2)の画像

※ 事例②
上記の図で父が死亡。法定相続人である母(父の所有する家屋に同居)及び子(父母とは別居)が共に相続放棄した。なお、母及び子による相続放棄によって法定相続人となる第二順位以降の者はいない。

前回の事例②において、民法940条に基づく相続財産保存義務を負う母は、相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまで当該家屋の保存義務を負うことになるとご説明しました。
そこで、今回は相続財産の清算人についてご説明します。

相続財産の清算人

相続財産の清算人については、民法951条及び民法952条が規定しています。

第九百五十一条(相続財産法人の成立)
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。

第九百五十二条(相続財産の清算人の選任)
1 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。

(1) 相続財産清算人とは

民法951条によると、相続人の存在、不存在が明らかでない場合(相続人全員が相続放棄をした結果、相続する者がいなくなった場合も含まれます)、その相続財産は法人となります(以下「相続財産法人」といいます)。
この相続財産法人の管理・清算を行うため、民法952条に基づき、利害関係者からの申立てによって家庭裁判所が選任する者を相続財産清算人といいます。

(2) 相続財産清算人の役割

相続財産清算人は、被相続人(故人)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして相続財産法人の清算手続を行います。また、前述の事例②のように、相続放棄者が民法940条にしたがって相続財産を管理している場合、相続放棄者からその相続財産の引渡しを受けて管理を引き継ぐことになります。また、清算後に残余する財産がある場合は国庫に帰属させることになります。

(3) 申立人

相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申立てることができる者は①利害関係人、又は②検察官となります。
①の具体例としては、被相続人の債権者、相続財産について特定遺贈を受けた者、及び特別縁故者が含まれると解されています。また、相続放棄者に関しても、民法940条にしたがって相続財産を管理している場合は、利害関係人に含まれると解されています。

事例②について

事例②において、母が民法940条に基づく相続財産保存義務を終了させるためには、相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡す必要があります。他の利害関係人から相続財産清算人の選任の申立てがなされない場合、母は自らが利害関係人として家庭裁判所に相続財産清算人の申立てを行い、それによって選任された相続財産清算人に対して当該相続財産を引き渡すことによって、相続財産保存義務を終了させることが可能となります。

弁護士 イメージ

弁護士

京都大学法学部卒業
甲南大学法科大学院修了

人気記事

  • 広告
  • 広告
  • 広告
  • 広告
  • 広告

遺言や相続でのお悩みを
私達が解決します。

フリーダイヤル0120-131-554受付時間 : 平日9:00〜17:00