第63回 これだけは知っておきたい相続実務知識②

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貞方 大輔

2024-05-31

第63回 これだけは知っておきたい相続実務知識②

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法定相続人は椅子取りゲームと考えるとわかりやすい?!

今回は法定相続分と遺留分の話をします。
前回は相続税を払うか払わないかのボーダーラインが基礎控除という話をしました。
3000万円+600万円×法定相続人数ですね。

今回は法定相続分とはなんぞや?という話です。
法定相続分とは、強制ではないが、普通だったら遺産をこう分けるよね、という分け方の目安のようなものです。誤解されてる方もいますが、必ずしも法定相続分どおりに分ける必要はありません。

まず、前回(相続実務知識①)同様に、父、母、長男、長女のご家庭で、父が亡くなった場合を考えてみましょう。
法定相続人は3名ですが、この法定相続分とは「遺産をもらえる人の椅子」とお考えください。
また、この遺産をもらえる人の椅子は、「原則2個」あるのです。
まず、法定相続人の椅子の2個のうち1個は配偶者がいれば、必ず配偶者に与えられます。残りの1個の椅子を以下の3者のうち誰かがいればその人がもう一個の椅子に座ることになります。第一優先順位が子、第二優先順位が親・祖父母、第一第二優先順位がいなかった場合、最後に兄弟姉妹に椅子が回ってくるということになります。
この父、母、長男、長女のご家庭では、父が亡くなったら、2個の椅子のうち、1個は配偶者が座ります。もう一個の椅子は誰に与えられるのか。第一優先順位が子ですので、長男と長女が残りの椅子に座ります。
※正確には第一順位と言いますが、分かりずらいので第一優先順位と言い換えています。

もしこの亡くなった父の実親が生きていて、兄(父にとっての兄)がいた場合でも、配偶者もいるし、第一優先順位の子がいますので2個の椅子は埋まります。実親と兄には椅子は与えられません。法定相続分は、椅子自体は2個しかないので、配偶者1/2で、長男と長女は1個の椅子を分け合うので1/4ずつになるのです。

ここで少しだけ前提条件を変えてみます。
【例1】父、母、子なしのご家庭で、父が亡くなった場合
相続人の椅子は2個あります。配偶者は常にこの1個の椅子に座れます。もう1個の椅子は誰が座れるのでしょうか?
父の両親はすでに他界しています。しかし、弟が一人いたとします。そうすると、第一優先順位が子、第二優先順位が親・祖父母、第一第二優先順位がいなかった場合、最後に兄弟姉妹に椅子が回ってくるといいました。そうです、弟が相続人になります。

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上記のように第一優先順位の子がいると配偶者は1/2になるものの、子がいないと配偶者の法定相続分は2/3に増えます。
さらに第一優先順位の子だけでなく、第二優先順位の親・祖父母がいないと更に配偶者の法定相続分は増えて3/4になります。残りがもう一個の椅子に座れる人の法定相続分になるというわけです。

遺留分は原則、上記の法定相続分の半分になると覚えてください。
法定相続分があくまで目安で強制するものではないのに対し、遺留分は最低限もらうことができる権利と考えてください。遺言で「全部、妻に相続させる」としても遺留分は「子が主張、請求すれば最低限もらうことができる権利」ということです。
ちなみに遺留分に関しては1つ注意があります。亡くなった方(被相続人)の相続人が第三優先順位の兄弟姉妹であった場合、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。
兄弟姉妹は優先順位は一番最後だし、遺留分はないし、相続の世界においては“遠い存在”といえますね。

【例1】のケースはまさにそれに該当します。
父、母、子なしのご家庭で、父が亡くなった。
父には弟がいた。
法定相続人;母(亡くなった人の妻ですね)、弟(亡くなった父の弟)
法定相続分;母3/4、弟1/4
遺留分;母1/2、弟なし

ここの遺留分だけイレギュラーですね。母3/4の半分の3/8ではありません。兄弟姉妹には遺留分がないので、遺留分の権利を母と弟で分け合うことが不要になり、母が半分(2/1)を請求することができるのです。
もう一つだけイレギュラーなお話をします。それ以外はすべて法定相続分の半分が遺留分なのでいちいち覚えなくても「法定相続分の半分だな」で遺留分を理解できます。

【例2】Aさん死亡、未婚で子なし、母と兄がいます。
このケースでは2個のうちの1個に必ず座れる配偶者がいません。よって配偶者が座れる椅子は消えます。次にもう1個の椅子について考えます。
まず、第一優先順位の子もいない。第二優先順位の母がいます。第三優先順位の兄はいますが、第二優先順位の母が優先されるので、母が相続人になるということです。
法定相続人は母1人なので法定相続分は1、つまり100%です。一方で、母の遺留分は1/3になります。この1/3は特殊ですよね。半分ではありません。先ほど兄弟姉妹には遺留分はないと言いましたが、相続人が直系尊属のみ(親・祖父母のみ)の場合は半分ではなく1/3と覚えてください。あとはすべて法定相続分の半分が遺留分となります。

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貞方 大輔

立命館大学卒業後、大手生保を経て、アレース・ファミリーオフィスへ入社。
一般社団法人相続終活専門協会 代表理事

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