第51回 遺言執行者に就職した場合の対応(その①)

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益子 真輝

2022-07-01

第51回 遺言執行者に就職した場合の対応(その①)

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はじめに

今回は、遺言執行者について解説していきます。なお、今回の解説については、令和4(2022)年4月1日時点における、民法を前提にしています。

遺言執行者の選任について

そもそも、遺言執行者とは、遺言者に代わって遺言の内容を実現するために必要な事務処理を執行する者です。
遺言執行者を選任する方法については、①遺言自体によって行う場合(民法1006条)、②利害関係人の請求によって家庭裁判所が行う場合(民法1010条)があります。もっとも、未成年者と破産者は、遺言執行者になることができません(民法1009条)。
また、遺言執行者に選任された者は、拒否することもできるため、遺言執行者に就職することを承諾した場合に、遺言執行者として任務を行うことになります(民法1007条1項)。

遺言執行者の権限について

遺言執行者は、相続財産の目録を作成することや(民法1011条)、遺言の内容を実現するために相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為を行う権利を有し及びかかる義務を負う事になります(民法1012条1項)。
また、遺言執行者がいる場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為を行うことができません(民法1013条1項)。そのため、遺言執行者は、相続人によって遺言執行者の職務を妨害されることなど(相続人によって、勝手に遺産を処分される等)を回避するためにも、遺言執行者への就職を決意した場合には、直ちに相続人に対して、就職通知を送付することが考えられます。
記載する内容としましては、以下の内容が考えられます。

① 被相続人の死亡の事実
② 遺言の種類・存在
③ 遺言書の内容(民法1007条2項参照)及びその対象財産
④ 遺言執行者の就職意思
⑤ 遺言執行者の権限及び職務内容についての説明
⑥ 対象財産に関する相続人の処分権限(民法1013条)についての説明
⑦遺言執行者の費用・遺言執行の報酬など

ケーススタディ

被相続人Aは、遺言において、Bに不動産甲を遺贈し、Xを遺言執行者と指定した。その後、Aが死亡し、死亡した翌日にはAの相続人であるCが、勝手に不動産甲を、Y(第三者)に売却し、その移転登記がなされた。かかる場合に、CY間の売買契約は、有効となるか。

ケースのように、遺言の内容を前提とすると、不動産甲はBに遺贈されるべきであり、遺言執行者であるXは、その内容を実現させる必要があります。しかし、Cは、Yに対し、勝手に不動産甲を売却してしまっているため、Cの当該行為は、遺言執行者の権限と抵触する行為となります。その場合について、民法では、以下のとおり規定されています。

(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
3 略

つまり、基本的には、遺言執行者の権限と抵触するような行為を行った場合には、当該行為は無効となりますので、CY間の売買契約は無効となります。
もっとも、遺言や遺言執行者があることなどを公示するような仕組みがあるわけではないため、遺言者の意思実現や遺言の公正な執行という要請がある一方で、取引の安全を保護する必要もあります。そのため、ケースにおいても、Yが、CY間における不動産甲の売買契約が、遺言執行者の権限と抵触するような行為であることを知らなかった場合には、当該行為は、Y(第三者)との関係では、無効ということを対抗できず、Yは有効に甲の所有権を有することになります(民法1013条2項ただし書)。

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益子 真輝

同志社大学法学部法律学科卒業
神戸大学法科大学院修了

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