「息子に内緒で息子名義の預金口座に、小さい頃からコツコツお金を貯金して今じゃ1000万円になっているんですが大丈夫ですよね?」
※こういったケースの預金を一般的に「名義預金」と言います。
このようなご質問をよく受けます。
答えは「大丈夫じゃない」です。
良くあるパターンとして、名義預金をしていた母が死亡した後(相続発生後)に税務調査が入り、
「この息子さん名義の預金1000万円は、実質的にお母さんの預金ですよね?よってお母さんの相続財産となります。相続財産を過少に申告していたことになりますので、相続税の修正申告をしてください。また過少申告加算税、延滞税も納税してください。」
と言われる可能性があるのです。
相続税の税務調査では、このような名義預金も徹底的に調査されますし、それだけやっている方も多いということでしょう。
また、「こういった行為は実質的に母から息子への贈与にあたるので、贈与の時効は6年なので、6年以上前の名義預金は大丈夫じゃないか?そもそも年間110万円以内なら贈与税もかからないし。」というご質問もあります。
これも大丈夫ではありません。
そもそも、すべて母が息子の名義を借りて自分で貯金をしていただけなので、贈与自体が成立しておらず、時効という概念もない、というわけです。
ここで名義預金と贈与の違いを簡単にご説明します。
名義預金とは、「名目上は配偶者や子などの名義で作られた口座だが、実質的には名義人とは異なる人が貯蓄、管理していた預金」です。贈与を受ける人(受贈者)の意思や認識がないものも名義預金となるため、親が子の口座を作り、子に知らせずに貯金しておくこともこれにあたります。
このような名義預金は贈与が成り立っていないため、すべて相続財産に加算されます。
一方で、贈与は、贈与する人(贈与者)と贈与を受ける人(受贈者)の双方に、贈与の意思や認識があることで成立するものです。
贈与が成立する要件として
①贈与者の「贈与しますよ」という意思があること。
②受贈者の「もらいましたよ」という認識があること。
③受贈者が「もらった財産を自分で管理し、自由に使える状況にある」こと。
以上の3点があります。
親が子の口座に一方的に預金し、親がその通帳や印鑑を所持しているということは、少なくとも上記の②と③を満たしていないことになります。つまり贈与が成立していないのです。
贈与であれば相続税がかからずに済んだかもしれないものが、名義預金と判断されてしまうと相続税がかかってしまいます。このようなことにならないよう、名義預金と贈与の違いやその対策については事前に確認しておくことが得策です。
もし、すでにこのようにコツコツと子や孫などの名義でお金を貯めてしまっている場合、適正に戻す対策は全くないの?と言われると、適正な形にする方法もあります。ただし、名義預金の残高などによっては慎重に行う必要がありますので、専門家にご相談いただければと思います。