遺言には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言、の3つがあります。
今回の法改正で変更となったのは、自筆証書遺言です。
使いやすくするための法改正とのことですが、どう変わったのか見ていきましょう。
メリットは2つ、形式と保管方法、
1.形式、
今回の法改正では、遺言書の全文を自筆で書かなくてもよくなりました。
ご高齢の方にとっては、遺言書を書くこと自体が大きな負担で、資産家の方は、たくさんの資産を財産目録として残すとなりますと、大変な作業量となっておりました。
これらをパソコン等で作成できるようになりました。
また、パソコン等で、一覧を作成しなくとも、不動産登記事項証明書や預金通帳のコピーの添付による一覧リストの作成も認められることになりました。
但し、偽造防止の観点から財産目録には自署捺印が必要です。
施行時期は、来年(2019年)1月の予定です。
2.保管方法、
もう一つの大きな法改正は、法務局に自筆証書遺言を預けられる制度が始まることです。
これまで自宅にこっそり保管していて、1通しかない自筆証書遺言をなくしてしまったり、死後家族に発見されなかったりすることもありました。
また、第一発見者が内容を改ざんすることもありました。
法務局での保管制度が始まることで、これらのリスクはなくなります。
法務局に預ける際には、遺言書保管官が遺言書を審査しますので、日付や署名捺印等の形式不備については指摘してもらえます。
また、これまでは、自筆証書遺言の場合、家庭裁判所の検認(相続人等の立会いの下、遺言書を開封し、内容確認すること、偽造防止のため)が必要でしたが、すぐに相続手続きが始められるようになります。
費用は、数百円の印紙代のみです。
さらに、遺族は相続開始後に遺言書の検索が可能で、閲覧や写しの請求の可能です。
相続人の一人が写しの交付を受けた場合は、他の相続人に対して、遺言書が保管されている、との通知が届きます。
施行時期は、2020年7月の予定です。
遺言の今後、
形式や保管方法が使いやすくなったため自筆証書遺言書の利用者が増え、遺言制度が普及し、「争族」が減少することが期待できることは大変喜ばしいことと思います。
但し、過去の「争族」の事例をみますと、遺言書本体と財産目録の日付が異なる、また、署名の筆記具が片方は毛筆、片方はボールペンで異なる、といったことから争いになったことがあります。
それらを勘案しますと、現在最も利用されている公正証書遺言が安心です。
公証人に内容を伝えて作成するため、2人以上の証人が必要、数万円以上の費用がかかるといったデメリットはありますが、プロが作成に関与するため無効となるリスクは低く、公証役場が遺言書原本を保管するため安全です。
税理士
監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)にて東証1部上場の大手商社などの金融商品取引法監査に従事
税理士法人ゆびすいにて相続税、法人税、所得税など各種税務案件に従事
2017年アステルフォース税理士事務所を開設、資産税を中心に活動し現在に至る
株式会社アレース・ホールディングス取締役