第13回 寄与分(2)

第13回 寄与分(2)

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前回は寄与分についての考え方をお話ししました。労務提供、財産給付、療養看護などによって被相続人の財産の増加や維持に特別の寄与をした相続人には、相続人間の公平性を保つため、その寄与分を特別に相続財産として与える、というものでしたね。
ただ、この「寄与」については、数多くの争族の論点になっているんです。実際に誰がどれくらい特別に寄与したのか、それを万人に共通して図れる物差しがないからなんですね。
では、いったいこの寄与分はどのように決定されるのでしょうか?今回はそんなお話です。

寄与分の決定については、基本的には「共同相続人の協議で定め」(904条の2第1項)としています。つまり、まずは自分たちで決めなさい、というわけですね。単純に考えればそれはそうですよね。自分たちで納得して協議が調うのであれば、そもそも相続人間の公平性は保たれていると考えられるからです。
ただ、皆さんも想像がつくと思うのですが、『誰がどれだけの「労務提供」「財産給付」「療養看護」などをした結果、どれだけの「財産の維持・増加に寄与したか」ということを自分たちで計ることは難しいのではないでしょうか?だからこそ、寄与分が論点となる争族が起きやすいんです。そこで、共同相続人間の協議が調わない時、満を持して出てくるのが、おなじみの司法機関「家庭裁判所」です。民法上は下記の通りに定められています。

前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める(904条の2第2項)。

家庭裁判所では寄与分の調停又は審判の手続を利用することができます。調停とは、家庭裁判所が当事者双方から事情を聴いたり,必要に応じて資料等を提出してもらった上で,解決案を提示したり,解決のために必要な助言をし,合意を目指した話し合いを進めることをいいます。話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、審判手続が開始されます。この審判とは、裁判官が当事者から提出された書類や調査官が行った調査の結果等に基づいて判断を決定する手続きをいいます。

つまり、調停においては最終意思決定が相続人側にあり、審判においては最終意思決定が裁判官にある、ということですね。他の相続トラブルにおいても同じことが行われますが、やはりこういった調停や審判という文言を読むだけでも争族は避けたいものだと思いますよね。

それでは最後に寄与分をどのように計算するのかをお話します。

被相続人Aが死亡し、妻W、子X、子Yが相続人である。遺産は1億円。子Xに寄与分2,000万円が認められている。

このような場合、寄与分の計算は以下のようになります。
1:相続財産から寄与分を控除する。
 1億円-2,000万円=8,000万円(みなし相続財産)
2:みなし相続財産8,000万円を共同相続人に法定相続分で割りつける
 妻W:8,000万円 × 1/2 = 4,000万円
 子X:8,000万円 × 1/4 = 2,000万円
 子Y:8,000万円 × 1/4 = 2,000万円
3:寄与分を加算する
 妻W:4,000万円
 子X:2,000万円 + 2,000万円= 4,000万円
 子Y:2,000万円
4:その結果、遺産1億円は、次のような割合(具体的相続分)で各相続人に割り当てられる
 妻W:子X:子Y = 4,000:4,000:2,000 = 4:4:2

以上のように、寄与分は遺産分割時にはみなし相続財産から除外してから計算するため、具体的相続分は法定相続分の割合とは大きな差が出てくることがあります。もう皆さんもお分かりかと思いますが、寄与分の有無は相続時に問題となることが多くなり、争族が発生する大きな要因となるわけですね。

最後に、皆さんにぜひお考えいただきたいことがあります。以前、このお話しました「遺留分」という言葉を覚えていらっしゃいますか?遺留分とは「民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる財産」のことでした。では、1人の相続人による寄与分が多額にわたった場合、被相続人の財産の維持・増加に貢献した結果の「寄与分」と、他の共同相続人が相続人であるということだけで主張できる「遺留分」はどのように考えられるのでしょうか。これは判例も出ていますので、ぜひご自身でも考えてみてくださいね。

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