『相続でもめるときの典型的なケース』について読者の反響がありましたので、今回はその第二回ということで私の方から説明したいと思います。
相続でもめる典型例
以下の事例で見てみましょう。
・母が死亡(父は数年前に死亡)、今回は2次相続にあたります。
・相続人は子供が2人。(一人っ子などの場合は相手がいないのでもめようがありません)
母は遺言を遺さなかったので、母の遺産をどのように分割するかという遺産分割協議において、子供2人の間での話し合いが難航することが多々あります。もしくは難航せずともどちらかが非常にモヤモヤを抱いたまま遺産分割協議で合意(印鑑を押すということ)することも。
相続でもめる分岐点①
相続でもめる分岐点一つ目は、亡くなった母が遺言を遺していないことです。遺言がなく、遺産分割協議をすることがもめごとの始まりと言っても過言ではありません。一般的には母が遺言を遺していれば、その遺言内容どおりに遺産分割が行われ、子供2人がそれに意見を挟む余地は基本的にありません。ところが遺言を作成しているのは亡くなった方のおよそ1割程度のため、9割の方がもめる可能性があるというわけです。
相続でもめる分岐点②
遺言を遺していなかったため、子供2人で母親の遺産を分ける相談をします。これが遺産分割協議です。
ここで上記の事例で言えば、子供2人のうちどちらかが
・傲慢な人
・生活に困窮している(お金が欲しい)
・母親の世話を分担してやっていない(どちらか一方のみが母の世話をしていた)
などの場合、遺産分割協議でもめることが多々あります。母の介護を子の一方がしたのにも関わらず、遺産分割では半分ずつにしたりすると、『私は介護をいっぱいしたのになぜ半分しか相続できないの?』となったりして不満が残ります。
このようになったときの選択肢はだいたい2つ。
1.子供のどちらかが妥協する
2.喧嘩する
日本人は特に欧米とは異なり、議論になることは“どちらかというと喧嘩”と解釈することが多いので、強く言った人の意見を尊重し、他は妥協することになりがちです。もちろんここで妥協しないと本当に喧嘩となり、調停や審判に発展したり、時間とお金がかかるわけですが…
その後は?
結局のところ妥協した方の子供はモヤモヤが残り、あとで後悔することも多いです。一度遺産分割協議書に印鑑を押すとそれを後からひっくり返すことは簡単ではありません。子供2人のうち、“優しい”性格の方の子供が『とりあえず、急かされたし、もめたくないし…』ということで印鑑を押してしまった…ということもよくあります。専門家に相談して何とかなるわけでもないケースも多く、非常に難しい問題ではあります。
結局のところ、『遺言を作っておけば良かった』という結論に至るわけです。すでに発生した争いごとを二度と起こさないためにも自分が亡くなったときのことを考え、事前に遺言を作ることを心掛けるべきです。子供同士で争いが起きるのは“遺産分割協議書を作るとき”ですので、親がきちんと遺言を書くべきだということです。遺言を書いておけば、子供たちで喧嘩になることもなく(正しくは協議しようがない)粛々と遺産分割が執行されます。