未婚率の増加や出生率の低下、高齢化といった社会的背景により、相続人が誰もいない(全員亡くなった)、あるいは兄弟姉妹のみといった方が増えています。
それに伴い、
「相続人が誰もいない場合、自分が亡くなったら財産はどうなるの?」
「相続人がいないため、生命保険の死亡保険金受取人を親族以外の第三者にしているけど、きちんと支払われるの?手続きはどうしたらいいの?」
「相続人は兄弟姉妹のみだけど、遺産を巡っての争いを防ぐためには?妹にしか遺産を渡したくない。」
などといったご相談も増えています。(実際のご相談内容は多岐にわたりますし、もっと、もっと複雑ですが…)
そんな中、ご存じでない方や誤解されている方も意外と多いと最近感じたので、改めて申し上げますと
“兄弟姉妹には遺留分はありません”
兄弟姉妹のみが法定相続人のケース、配偶者+兄弟姉妹が法定相続人のケースでは、兄弟姉妹に法定相続分こそありますが、遺留分まではないのです。中には、相続に詳しいという専門家に聞いたけど「遺留分はある」と言われたという方もいらっしゃいますが…
兄弟姉妹が相続人のケースは、争う族やトラブルの代表格と言えますし、悩んでいらっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。
「財産を渡したい兄弟姉妹を、生命保険の死亡保険金受取人に設定しておく」
「財産を渡したい兄弟姉妹に対して、生前に贈与しておく」
「財産を渡したい兄弟姉妹が年下(弟・妹)であれば養子にする」
といった主な対策がありますが、やはりデメリットがあったり、実用的・現実的でなかったり、といった問題点が出てくることが多いです。
全財産を生命保険にしておくことは現実的ではありませんし、生前贈与も遺言がなければ不十分ですし、場合によってはせっかく贈与した兄弟姉妹が相続時に特別受益を主張されてしまう(=取り分を減らされる)可能性もあります。また、養子縁組には抵抗がある方も少なからずいらっしゃいます。
そんな問題点を解消・軽減するためにも…
「遺言をつくる」
やはりこれを最優先で検討すべきだと思います。
財産を渡したい兄弟姉妹を遺言(公正証書がベスト)で定める、あるいは、どの兄弟姉妹にも財産を渡したくないなら、他に渡したい人(団体への寄付などを含む)を遺言で定めるのです。
将来、気持ちが変わっても遺言なら変更もすぐにできます。遺言できちんと定めておけば、兄弟姉妹に限っていえば遺留分の問題は解消できるのです。つまり“財産を渡したくない”という意思が実現できることになります。
生前に兄弟姉妹できちんと話し合っておく(口約束)、うちは仲が良いから大丈夫、と安易に考えている方もいらっしゃいますが、些細なことから争いに発展しますし、一瞬で深刻化していきます。“兄弟は他人の始まり”とはよく言ったもので、幼い頃はお菓子を取り合った最大のライバルが、今度は遺産を奪い合うという骨肉の争いになってしまうのです。
直近の民法改正(財産目録はパソコンなどでも作成OK、自筆証書遺言を法務局が預かってくれる等)もあり、遺言作成のハードルがグッと低くなりました。無用な争いを防ぎ、最後の思いを実現するためにも、遺言がもっともっと日本において浸透していくことを望むばかりです。