第25回 改正相続法

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江幡 吉昭

2019-09-10

第25回 改正相続法

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今回は2018年改正が行われた民法(相続法)の話をしたいと思います。今回は、2020年に施行予定の「配偶者居住権の新設(2020年4月1日施行予定)」と、「法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(2020年7月10日施行予定)」についてお話します。 

配偶者居住権の新設(2020年4月1日施行予定)

配偶者居住権とは、簡単に言うと、被相続人の配偶者がそれまで住んでいた自宅(被相続人所有の建物)に住み続けられる権利、ということです。
現行の民法では、被相続人の配偶者が遺産分割によって居住用不動産を相続すると、その不動産が高額で評価されることが多いため、法定相続分の多くを居住用不動産が占めてしまい、その他の財産(現金・預貯金など)を取得できない、という問題があるのです。
さらに、居住用住宅の他には財産があまりないという場合、多くのケースでは代償分割によって配偶者が不動産を相続することとなり、代償金を他の相続人に支払うことになりますが、その現金がないため、結果的に住宅を手放さなくてはならない、ということが発生して配偶者にとって大きな負担となっていたのです。
この配偶者居住権が創設されることで、配偶者は以前からの生活を継続できるようにすることに加え、その後の生活資金を確保することができるようになります。
それでは事例を見てみましょう。

【現行民法(改正前)の事例】
相続人:配偶者と子
遺産:居住用不動産(自宅)2,000万円    
   預貯金 3,000万円
配偶者と子の相続分= 1:1(妻2,500万円 子2,500万円)

<計算>
遺産は自宅と預貯金を合わせて5,000万円であり、配偶者と子で2,500万円ずつを分け合うこととなる。しかし、自宅の評価額が2,000万円であるため、配偶者がそのまま自宅を相続した場合、預貯金の相続分は500万円のみとなる。
配偶者:自宅(2,000万円)+預貯金500万円=2,500万円
子:預貯金2,500万円=2,500万円 

この結果ですと、配偶者は住む場所はありますが老後の生活費が不足する可能性が高いですよね。それだと相続としては本末転倒だと思いませんか?
それでは、同様の事例の場合、2020年の配偶者居住権施行後はどうなるのか見てみましょう。

【2020年施行後の事例】
相続人:配偶者と子
遺産:居住用不動産(自宅)2,000万円    
   預貯金 3,000万円
配偶者と子の相続分= 1:1(妻2,500万円 子2,500万円)

<計算>
自宅の評価を1/2ずつに分割する。このとき、配偶者居住権(1,000万円)と負担付き所有権(1,000万円)に分割となる。ちなみに、負担付き所有権とは「居住権のない所有権」を指す。
続いて、預貯金も1/2ずつ分割。それぞれ、1,500万円ずつ相続。
その結果として、以下のような相続となる。
配偶者:配偶者居住権(1,000万円)+預貯金1,500万円=2,500万円
子:負担付き所有権(1,000万円)+預貯金1,500万円=2,500万

ご覧の通り、施行前と施行後の配偶者が相続する預貯金が1,000万円も増加していますね。これにより配偶者は住む場所を確保し、かつ老後の生活費の不安からも解消されますね。
 

法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(2020年7月10日施行予定)

遺言書の形式は3つありましたね。そのうち、自分で遺言書を保管しなくてもよかったのは、どの遺言だったでしょうか。早速答えを言ってしまいますが、そうです、公正証書遺言でしたね。公正証書遺言では公証役場で保管されます。
一方、自筆証書遺言、秘密証書遺言は自分で保管する必要があり、デメリットとして紛失・破棄・改ざんなどのリスクがありました。
今回の改正では、そのうち自筆証書遺言について、法務局(遺言書保管所)に遺言書の保管を申請(遺言者を作成した本人が手続き)することができるようになります。
遺言者の死亡後、相続人等は全国にある遺言書保管所に、被相続人の遺言書が保管されているか調べることや、保管されている場合はその写しの交付請求が出来るようになります。もちろん、原本の閲覧も可能になるそうです。
上述の紛失・破棄・改ざんのデメリットを防ぐことに加え、こうして遺言書保管所に保管された自筆証書遺言については、家庭裁判所の検認は不要となるというメリットもあるんです。
しかし、形式は違えど、同じ「遺言」を扱うのに、どうして公証役場や法務局(遺言書保管所)という違う場所に保管するのか、という疑問は残りますよね・・・。いろいろあるんでしょうね。

このようにみると、今回の改正は、たしかに大きな改正と言える内容でしたね。ぜひ今年の7月から施行されている新しい制度は知識として蓄えておきたいところですね。このように配偶者居住権や遺言書等、相続に関する法律が大きく変わりましたので、これを機にお客様などにお話してみてはいかがでしょうか?
そして、またいつになるかは分かりませんが、まだまだ存在するであろう現行制度の問題点や盲点を踏まえて、次回の改正がどのように行われるのか、とても楽しみですね。

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