巷でいわゆる節税保険と呼ばれた「保険料の全額を損金に算入でき、かつ貯蓄性の高い法人契約の生命保険」の税制が変更になることはご承知のとおりかと思います。
これまで、この遺産相続.comでも数回にわたり取り上げてきました。
「第19回 全損定期、ついにフタ」(2019.4.12)
「第16回 全額損金の法人保険に蓋?その3」(2019.2.22)
「第15回 全額損金の法人保険に蓋?その2」(2019.2.14)
「第4回 全額損金の法人保険にも蓋?」(2018.7.4)
本件に関するパブリックコメントの受付はすでに終了しており、税務当局からの正式な通知を持っている状況です。
過去にも、逓増定期保険や終身がん保険といった商品に対して、全額損金算入の取扱いが認められなくなったことがありましたが、共通していえるのは「保険料の全額を損金で落とせて、貯蓄性の高い商品」ということでした。
さて、ほんのここ数日のことですが、生保各社の方々とお話をする中で、頻繁に耳にするようになったビックリな話題があります。
それは、「法人契約の医療終身保険(短期払)も全額損金算入ができなくなる可能性がある」ということです。
しかも、今までの逓増定期や終身がん保険、生活障害定期のように事前のアナウンスがなく、突然そういった保険に加入できなくなる可能性が高いです。実際にどのような見解が税務当局から出されるか6月上旬まで待つ必要がありますが、該当する商品を販売する保険会社にとっては非常にインパクトが大きい話です。
とくに今回のインパクトは「解約返戻金がほとんどない(あるいはまったくない)、つまり貯蓄性が低い」商品にも関わらず税制の変更があるという点です。
どうやら先日締め切られたばかりの全損定期のパブリックコメントで「法人医療保険の短期払いに関する指摘」が納税者側からあったため、今回の税制改正に至ったと模様です。
生保各社の営業現場によっては、すでにオープンになっているところもあり、いつ税制が変更(=全額損金不可)となるか分からないため「今のうちに」ということで、いわゆる駆け込みの販売に動いている姿もあちらこちらで目にします。
尚、すでに加入された既契約にも訴求して適用されるかというと、現時点ではまだ不明確ですが、過去の税制改正においてはすべて「既に契約した契約者」は守られています。
あくまで変更イメージですが、これまで医療終身保険は「保険料払込の都度、全額損金に算入」していましたが、短期払(払込期間が5年、10年など)の場合、「払込期間をもとに算出した損金額を算入」する取扱いへ変更されることが可能性として考えられます。
<具体例>
・被保険者年齢:55歳
・保険期間:終身
・払込期間:55歳~65歳(10年)…①
・計算上の保険期間:55歳~115歳(60年)…②
※終身型の計算上の保険期間を115歳までとする。
このケースの損金算入割合は
損金算入割合=10年(①)/60年(②)=1/6
つまり、支払う保険料の1/6しか損金に算入できず、残りの5/6は「前払保険料」として資産計上となります。(資産に計上した前払保険料は払込満了後、計算上の保険期間である115歳までの50年間で均等に取り崩していきます。)
まだ情報が錯そうしており、確かなことは申し上げられませんが、今後の動向を注視していく必要がありますね。