LGBTQの方々にとって、相続の問題は法的に特有の課題を含むことがあります。
以下に主なポイントを説明します。
近年、多くの国や地域で同性婚が法的に認められるようになっています。
現在、日本では同性婚は法的に認められていませんが、特定の地域ではパートナーシップ制度(後述します)が導入されています。
将来的に、日本でも同性婚が認められることになった場合、法的に結婚している夫婦と同様に相続権が認められることになるでしょうが、現状では養子縁組でもしない限り、パートナーは法定相続人になりえません。
よって遺言書を残していない限り、遺産を相続することはできないのです。このため、財産を確実にパートナーに渡すためには、遺言書を作成することが重要です。
遺言書の重要性
LGBTQの方々が財産をパートナーに確実に遺すためには、遺言書の作成が不可欠です。遺言執行者も必ず指定するようにしてください。
遺留分の問題
日本では、法定相続人(兄弟姉妹は除く)には遺留分という最低限相続することができる権利があります。パートナーにすべての財産を遺贈するとした遺言書を作成しても、遺留分権利者である配偶者、子、直系尊属(両親など)から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
生命保険の活用
死亡保険金受取人をパートナーに指定することで、遺産分割および遺留分の対象外として財産を遺す方法もあります。ただし、パートナーを死亡保険金受取人に指定できるとは限りません(保険会社次第)ので、保険法第44条に基づいて、遺言による受取人変更も可能です。
特別縁故者の制度
相続人がいない場合や全ての相続人が相続を放棄した場合に、家庭裁判所が特別縁故者に財産を分与することがあります。LGBTQのパートナーもこの制度の下で財産を受け取ることができる可能性がありますが、法的手続きを行い、特別縁故者として認められる必要があります。
いずれにせよLGBTQの方が、相続に関して適切な準備を行うためには、専門家に相談し、適切な遺言書作成やその他の方法・対策についてアドバイスを受けることが大切です。
パートナーシップ制度とは
パートナーシップ制度は、同性カップルを認める制度で、結婚とは異なる形でパートナーシップを公的に証明するものです。日本でもいくつかの自治体で導入されており、具体的な内容や効果は自治体ごとに異なります。一般的なパートナーシップ制度の特徴とその効果について説明します。
パートナーシップ制度の概要
1. 証明書の発行
自治体が発行するパートナーシップ証明書により、同性カップルが公的にパートナーとして認められます。この証明書は、自治体が定めた要件を満たすカップルに対して発行されます。
2. 申請要件
パートナーシップ証明書の申請には、カップルが一定期間同居していること、成人であること、独身であることなどの要件が必要とされることがあります。
効果とメリット
1.行政サービスの利用
パートナーシップ証明書により、自治体が提供する特定の行政サービスを受けやすくなります。例えば、公営住宅への入居申請、医療機関での家族としての対応などが挙げられます。
2.民間サービスの利用
一部の企業や団体は、パートナーシップ証明書を基に従業員の福利厚生を同性カップルにも適用しています。例えば、保険の受取人としての指定、企業が提供する家族向けサービスの利用などが含まれます。
3.法的な認知
法律上の結婚とは異なり、法的な相続権や税制優遇は直接的には適用されません。しかし、証明書の存在は社会的な認知を高め、パートナーとしての権利を主張しやすくする効果があります。
制限と課題
1.法的な制約
パートナーシップ制度は結婚とは異なるため、法的な相続権、扶養義務、税制優遇などの権利は直接的には与えられません。これらの権利を確保するためには、遺言書の作成や生命保険の受取人指定など、別途の法的な手続きが必要です。
2.自治体ごとの違い
日本では、2015年に東京都渋谷区が初めてパートナーシップ証明制度を導入しました。(同時期に世田谷区同性パートナーシップ宣誓を開始)それ以来、多くの自治体が同様の制度を導入しています。
パートナーシップ制度の具体的な内容や効果は自治体ごとに異なるため、制度の詳細については各自治体の公式ウェブサイトや窓口で確認する必要があります。
まとめ
パートナーシップ制度は同性カップルの関係を公的に認め、一定の権利やサービスを利用しやすくするための重要な制度です。ただし、法的な保護が限られているため、その他の法的手続きと併用して、より確実な権利の保護を図ることが重要です。