今週、田中先生の記事で「事業承継税制」の落とし穴についての記事がありました。この記事を補足する形で、そもそも「自社株問題とは何なのか」、「事業承継税制は何なのか」ということを簡単にご説明したいと思います。
このサイトでもたびたび取り上げている争う族は亡くなった後の問題です。一方で、亡くなる前の問題として、特に中小企業の経営者が最も気にしていることが自社株の問題です。
それでは自社株の問題とは何でしょうか?具体例を見てみたいと思います。
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例えば70歳のお父さんがいます。この人は都内のある鉄鋼会社の会長です。この会長は30年前に自分で会社を興して、今では300億円の売り上げを誇る会社です。会長(当時は社長ですが)1,000万円を資本金として出資してはじめた会社でした。それから30年たって、業績は好調。65歳を機に社長を長男に譲って会長として半分引退となりました。ところが1,000万円の資本金で始めた会社ですが、資本金の額は変わらないものの、相続税法上の自社株の評価が税理士によると、400倍である40億円となっているそうです。つまり、今、会長が今死んだら、長男など遺族に40億円の半分である、20億円程度の相続税がかかると税理士に言われてしまいました。さて、会長や長男は頭を抱えてしまいました・・・
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このような話は儲かっている会社では良くあること。資本金が1,000万円でそれが相続税法上の株価評価が400倍というのはそうそうある話ではありませんが、10倍程度になっている事例は世の中に本当にたくさんあります。「自分が死んだら子供たちが相続税を支払えない・・・」「相続税を払えないから会社をつぶすしかない・・・」
このような声にこたえて、国は「事業承継税制」という税制を毎年グレードアップさせています。
どのような税制かというと「今から5年以内に都道府県に事業承継税制を使うと手を挙げて、10年以内に事業承継すれば自社株に係る相続税や贈与税の納税を半永久的に猶予するよ」という制度です。
半永久的にというのがミソで、国が指定する条件を満たす限り税金を払わなくていい、という制度です。毎年この国が指定する条件というのが緩和されて今では非常に使いやすい制度になりました。
※以前は雇用条件などがあり、後継者がリストラしたりすると納税の猶予がなくなり、猶予された相続税を支払わなければならないなどのデメリットがありました。今はそのデメリットはありません。
これが非常に大まかですが事業承継税制や自社株問題となります。
しかし一般的には語られていないものの、この事業承継税制も大きなデメリットがあるのです。ここまでの話を理解できた方はぜひ、今週の月曜日に掲載している田中先生の第18回「事業承継税制は結局のところ株価対策は必要」を読んでいただければと存じます。