第53回 成年年齢引き下げと相続

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熊本 健人

2022-05-10

第53回 成年年齢引き下げと相続

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2022年4月1日より、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。今回は、成年年齢の引き下げに関連する相続問題について解説していきます。

未成年の法律行為の制限

民法の改正により、2022年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられました。成年年齢の引き下げは、公職選挙法の選挙権年齢が18歳と定められ、国政上の重要な事項の判断に関して、18歳、19歳の者を大人として扱うとの政策が進められていることが背景にあります。世界的にも、成年年齢を18歳とするのが主流ですので、成年年齢を18歳に引き下げることは、18歳、19歳の若者の自己決定権を尊重するものであり、その積極的な社会参加を促すことになると考えられています。

 改正後の民法第4条には、「年齢十八歳をもって、成年とする。」と規定されています。成年の反対語は「未成年」ですが、未成年者の法律行為には制限が課せられています。具体的には、未成年者が法律行為をするには、原則として、保護者たる法定代理人の同意が必要であるとされ(民法第5条1項本文)、未成年者が法定代理人の同意を得ずに法律行為をした場合、その法律行為は取り消すことができるとされています(同2項)。未成年者は判断能力が未熟だと考えられているためです。

 ただし、
①権利を取得するだけかまたは義務を免れるだけの法律行為(もっぱら未成年者の利益となる法律行為。民法第5条1項ただし書き)
②処分を許された財産の処分(同条3項)
③許された営業に関する法律行為(第6条1項)
については、未成年者も単独で確定的に有効に行うことができるとされています。このような場合には、未成年者が判断能力の未熟さゆえに不利益を被るおそれがないからです。

相続問題への影響

さて、相続との関係では、他の共同相続人との間で遺産分割を行うことは法律行為にあたります。一見、遺産分割は、財産を取得するだけの行為であり、上述の①権利を取得するだけかまたは義務を免れるだけの法律行為に当たり、未成年者も単独で行えるように思えますが、遺産分割協議は、負債を負う可能性もある以上、未成年者が単独で行える法律行為には当たりません。したがって、原則どおり、未成年者は単独で遺産分割協議を行うことはできず、法定代理人が未成年者に代わって遺産分割協議を行う必要があります。
もっとも、法定代理人は通常、親権者であるところ、親権者と未成年者のいずれもが相続人であるときは、両者の利益が相反する(親権者が自身の財産が多くなるように遺産分割をコントロールしてしまうおそれがある)ため、特別代理人として第三者を家庭裁判所に選任してもらったうえで遺産分割協議を行う必要があります。
これまでは、18歳や19歳の相続人は、遺産分割協議に参加するには、代理人を立てる必要がありましたが、2022年4月1日以降は、単独で協議に参加し、遺産分割協議書に署名捺印することができます。親の同伴や特別代理人の選任申立ては不要になります。


相続放棄についても、法律行為であるため、未成年者は単独で相続放棄をすることができず、法定代理人又は特別代理人が相続放棄の手続をすることになります。2022年4月1日からは、18歳になっていれば単独で手続を行うことができます。

また、未成年者は遺言の証人又は立会人になることもできず(民法第974条)、遺言執行者にもなることができません(同法第1009条)。
なお、遺言を行うこと自体は15歳以上であれば可能です(同法第961条)。


認知についても、成年年齢引き下げの影響を受けます。成人している子を自身の子として認知する場合、子の承諾が無いとできません(民法第782条)。これまでは子が20歳になるまでの間は子の承諾なく認知ができていましたが、2022年4月1日からは、子が18歳になっていれば子の承諾を得なければ認知できないことになります。


養子にする場合も成年年齢引き下げの影響を受けます。未成年の子を養子にするには家庭裁判所の許可が必要です(民法第798条)。これまでは、子が20歳になるまでは家庭裁判所の許可が必要でしたが、2022年4月1日からは、18歳、19歳を養子にしたい場合でも裁判所の許可は不要となります。

認知と養子については、相続人の人数に影響がありますので、今後は少なからず影響があるでしょう。

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熊本 健人

学習院大学法学部卒業
神戸大学法科大学院修了

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