第43回 増え続ける“空き家問題”

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貞方 大輔

2022-03-29

第43回 増え続ける“空き家問題”

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空き家が増え続ける原因

近年、日本国内において空き家の数が増え続けていますが、それはなぜでしょうか。考えられる原因としては主に以下の3点です。
1.少子高齢化に伴う人口の減少
2.固定資産税の増額
3.相続の発生
今回は、固定資産税の増額と相続について詳しく解説していきます。

固定資産税の増額

そもそもなぜ空き家の固定資産税が増えたのか、についてお話しします。
従来までは、空家の固定資産税についても住宅用地の特例が適用されて税額が優遇されていました。しかし、現在では「特定空家等」に該当すると、この特例が適用されなくなり、税額が高くなります。
この「特定空家等」とは下記のように規定されています。
① 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
② 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

そして、特定空家等は、
・措置の実施のための立入調査
・指導→勧告→命令→代執行の措置
という具合に調査があり、指導、勧告を経てもなお応じない住宅用地が該当します。

一方で、通常の住宅は事業用の建物も同じ税額では通常の住宅に対して課税負担が重いということを鑑みて、住宅並びに住宅が建てられている土地に対しては固定資産税の優遇措置が設けられています。

住宅1戸につき200㎡までの『小規模住宅用地』:課税標準の1/6
住宅1戸につき200㎡を超えた部分である一般住宅用地:課税標準の1/3
※都市計画税はどちらも1/3

住宅であれば1/6に減額になる固定資産税も特定空家等に該当してしまうと受けられなくなってしまい、固定資産税が上がってしまう、という事になります。

居住用財産(空き家)における譲渡所得の特例

空き家の所有者が亡くなった場合、基本的には空き家も遺族が相続する形になります。相続人が1人であれば大きな問題にはなりませんが、複数人いる場合は話し合いが必要となります。よって、相続人全員の同意がなければ、物件の処理や土地の売却などの手続きを行うことができません。そのため、話し合いが進まず放置される空き家も多く、また所有者がいることから行政が勝手に処分することもできないという現状があります。また、元々自分の持ち物ではなかったのにもかかわらず、それを持ち続けていると固定資産税がかかり、売るとなると所得税もかかります。
その所得税がネックとなり売ることを躊躇してしまいがちです。今まであれば、固定資産税はそれほど高くなかったことから、その結果現状のまま放っておくことができたので、空き家が社会問題化したというわけです。

そこで、相続した空家の所得税を減税する特例ができました。被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。
これは、相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる特例です。


(適用要件)

① 相続した家屋や敷地等の要件
・昭和56年5月31日以前に建築されたこと
・区分所有建物登記がされている建物でないこと
・相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと

② 譲渡する際の要件
・相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること
・相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること
・譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。
・相続の開始があった日から3年目の年の12月31日までに売ること
・譲渡対価の額の合計額が1億円以下(共有で譲渡する場合には合計額が1億円以下)であること
・親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。


③ 適用を受けるための手続き
ここがこの特例のハードルで、2段階で申請する必要があります。
空き家の所在する市区町村で空家の確認書(売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」)を発行してもらう必要があります。
その確認書等を確定申告に添付して税務署に提出します。


この特例はここに書ききれないほど要件がたくさんあり、かつ、複雑ですので、ご自身で確定申告する際はチェックリストなどを駆使して行うことをオススメします。またやはり専門家に頼まれる方が良いでしょう。


空家に関しては各自治体単位で取り壊し費用等の補助金や助成金が出ているところもあります。ご自身の自治体で補助金や助成金の対象となるかどうかを調べてみることも重要です。
※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

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貞方 大輔

立命館大学卒業後、大手生保を経て、アレース・ファミリーオフィスへ入社。
一般社団法人相続終活専門協会 代表理事

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