前回は遺産分割調停について解説しましたが、今回は遺産分割審判について解説します。
審判とは
審判とはどのような手続でしょうか。ひとことで言うと、当事者間の話し合いの手続である調停とは異なり、家庭裁判所が終局的な判断を行う手続をいいます。
調停の場合、調停委員会は、当事者間に合意成立の見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認められる場合には、調停を成立しないものとして事件を終了させることができます(家事事件手続法(以下「法」といいます。)第272条第1項)。そして、遺産分割調停事件が調停不成立によって終了した場合には、家事調停の申立ての時に、当該事項についての家事審判の申立てがあったものとみなされることになります(同条第4項)。すなわち、当事者が新たに審判を申し立てる必要はありません。家事調停を申し立てた者については、家事審判まで求めるのが通常であると考えられることから、このようなみなし規定が設けられていると考えられています。
家事事件手続法
(調停の不成立の場合の事件の終了)
第二百七十二条 調停委員会は、当事者間に合意(第二百七十七条第一項第一号の合意を含む。)が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合には、調停が成立しないものとして、家事調停事件を終了させることができる。ただし、家庭裁判所が第二百八十四条第一項の規定による調停に代わる審判をしたときは、この限りでない。
2 略
3 略
4 第一項の規定により別表第二に掲げる事項についての調停事件が終了した場合には、家事調停の申立ての時に、当該事項についての家事審判の申立てがあったものとみなす。
審判手続の流れ
審判は概ね以下の流れに沿って手続が進んでいきます。
①裁判所が当事者から陳述聴取を行う
裁判所は、原則として当事者からの陳述を聴かなければ、審判をすることができません(法第68条第1項)。陳述聴取というのは、要するに、裁判所が当事者から話を聞くということを意味していますが、特に方式に定めはありません。たとえば、審問という方法(期日において当事者が口頭で陳述するのを裁判官が直接聴く方法)や、家庭裁判所の調査官が調査によって間接的に陳述を聴取する方法、書面照会などによる方法があります。
もっとも、当事者が直接裁判官に陳述したいと希望する場合は、期日において審問を実施しなければなりませんので(法第68条第2項)、陳述聴取は審問を基本とする運用が想定されているといえます。
なお、裁判所が審問期日を開催する場合は、他の当事者も期日に立ち会うことができるようにする必要があり、他方当事者の手続の機会が保障されています(法第69条)。
②裁判所が事実の調査を行う
裁判所は、審判に必要な資料を収集することにより事実の調査を行い(法第56条第1項)、当事者はこれに協力する必要があります(同条第2項)。
遺産分割調停が先行して行われ、調停が不成立になったことによって審判に移行した場合は、裁判所は当事者から提出された資料の中から、審判に必要だと思われる資料を選択し、事実の調査を行うことになります。
③審理の終結
当事者から審判に必要な資料が提出されると、裁判所は、相手方当事者に対して十分な反論の機会を与えるため、相当の猶予期間を置いて審理を終結する日を定めることになります(法第71条本文)。もっとも、当事者双方が立ち会うことができる家事審判の手続の期日が開催されている場合は、裁判所が当事者に対し、審理終結に関する意見を直接確認することができるため、相当の猶予期間をおくことなく、直ちに審理終結宣言を行うこともできます(同条ただし書)。
④審判日の指定
裁判所は、審判を終結したときは、審判の日を定めなければなりません(法第72条)。実務上は、審判手続期日が開催されている場合は、審理終結日とあわせて審判日を指定してその場で告知することが一般的です。
⑤審判の確定
裁判所は、審判書を作成して審判を行わなければなりません。当事者に対しては、この審判書の謄本を送達する方法によって告知することが実務上一般的です。
審判に対して不服がある者は、告知を受けてから2週間以内に限り即時抗告という不服申立てを行うことができます(法第85条第1項、第86条)。
審判は、即時抗告の期間満了(2週間の経過)により、確定することになります。