第33回 ~揉めない、争わないための遺言~

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貞方 大輔

2021-12-14

第33回 ~揉めない、争わないための遺言~

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私たちの協会では、年間50件以上の相続税申告のお手伝いをさせていただいています。
当然のことながら、そのご家庭ごとに、話し合いや手続きの進み方が違いますし、直面する問題やトラブルがあります。もちろん円満な相続もたくさんあり、こちらが感動するような場面も経験させていただいたりします。
一方、泥沼の争いもあちらこちらで起こっており、特に親やきょうだいの遺産を巡り、兄弟姉妹が骨肉の争いを繰り広げ、精神的に追い詰められ、体を壊す方もたくさん目にしてきました。

遺言さえあれば

そのたびに感じること、お客さまに申し上げることが「遺言さえあれば…」ということ。例えば、「子どものうち、長男に多くの財産を託したい」とか「きょうだいのうち弟には財産を渡したくない」といった思いがあるときには、遺言を作らなければ、相続発生後、ほとんどのケースでその思いどおりになることはほとんどありません。遺言がなければ遺産分割協議、つまり相続人全員で話し合って決めることになるからです。争いの原因は遺産分割協議がほとんどです。(もちろん遺言があっても、争いになることはありますが、結局そのとおりに遺産分割しなければならないという点では大きく結果が異なります。)

遺言でも遺留分への配慮が不可欠

遺言の作成にあたっては、遺留分への配慮も不可欠です。遺言でも遺留分を制限することはできません。たとえば、親の相続では、子どもには遺留分があります。ほとんどのケースで“法定相続分の2分の1”が遺留分です。親が遺言で「全財産を長男に相続する」としていても、その他の子どもには遺留分があり、長男に対して遺留分侵害額請求がなされると、長男はその他の子ども(長男からみるときょうだい)に対して、現金で遺留分を精算(支払い)しなければなりません。

遺留分対策はできる!

この遺留分の問題は、生前に対策を取ることが可能です。
埼玉県在住のA子さん。数年前に夫を亡くしており、子どもは長男、次男、長女の3人です。長男と次男はろくでなしの人間だとA子さんは言います。自分が所有する金融資産や不動産(自宅や賃貸用物件)はすべて長女に相続させ、長男、次男には遺留分も含め、びた一文渡したくないと考えています。もちろん何も対策を取らなければ、長男、次男に財産が渡ってしまいますし、遺言で「長女に全財産を」としても、長男と次男が遺留分を請求してきたらアウトです。Aさんは、生命保険や生前贈与、その他の手段を活用しながら対策を講じているところです。もちろん想定されるリスクには留意しながら。

きょうだいの相続では遺言の効力は絶大

さて、時代は少子高齢社会です。独身で子どもがいない高齢者も増えています。親も他界していることが多く、その場合の相続人はきょうだいです。きょうだいの相続では、相続人である兄弟姉妹には遺留分がありません。兄弟姉妹は相続の世界では、比較的遠い存在といえるでしょう。遺留分がないということは、まさに遺言が絶大な効力を発揮することになります。何せ「兄と弟には一切相続させない、妹に全財産を相続する。」といった遺言があれば、そのとおりに実現できるからです。兄と弟には遺留分がありませんから、妹に対してどれだけ遺産をよこせ!と主張しても、よほどの事情(特別受益や寄与分)がない限り不可能です。

ちなみに、きょうだいに相続させたくないケースでは、遺言だけでなく、養子縁組により養子を迎え入れる選択をされる方もいます。養子にすることにより、その養子が唯一の相続人になり、きょうだいは相続人ではなくなるからです。

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貞方 大輔

立命館大学卒業後、大手生保を経て、アレース・ファミリーオフィスへ入社。
一般社団法人相続終活専門協会 代表理事

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