第27回 遺言作成にあたって大切なこと

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貞方 大輔

2021-08-27

第27回 遺言作成にあたって大切なこと

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遺言はやっぱり大切です

コロナ禍もあってか、遺言に関するご相談、ご依頼が増えています。
「自分で遺言を作ってみたのですが、不備や問題がないか確認してもらえませんか?」というご依頼もありますが、遺言を作ることは大変意義のあることとはいえ、やはり内容が不十分であったり、誤解を招く表現があったり、そのままでは意思にそぐわない結果を招くような内容であったりと、不備が散見されることも多いです。
今回は、遺言を作成するにあたっての注意点や大切なことをお話したいと思います。

①不動産は登記簿に従って確実に書こう

「東京都府中市府中町の土地は、長男の●●に相続させる」と書いてあったとします。
これでは地番が特定できないため、もしも府中町に複数の土地があったりすると、どの土地なのか特定できず、相続人間で争いになったり、法務局で相続登記(不動産の名義変更)を受け付けてもらえないことがあります。そんなことにならないように、登記簿を見ながら、土地の場合は、「所在、地番、地目、地積」を、家屋の場合は、「所在、家屋番号、種類、構造、床面積」をきちんと書くようにしましょう。
さらに不動産について付け加えると、共有名義での相続はなるべく避けるべきです。
例えば「府中町●丁目●番の土地は、長男●●と次男■■で2分の1ずつ相続させる」といった内容です。もしも、そのように相続した場合、長男と次男それぞれに配偶者と子がいる場合、将来、長男と次男の相続が発生した際に、相続権(=土地の所有権)は、それぞれの配偶者、子に移るため、相続のたびにどんどん所有権が分散していき、売却や所有権を一人に集約しようとする場合に非常に困難になるリスクをはらんでいるからです。不動産はできる限り一人の相続人に相続させることをオススメします。

②遺言に記載されていない財産が出てきた場合に備えて

財産をどのように相続させるかを遺言に書くわけですが、書くべき財産を漏らしていた(うっかり失念してしまった)、あるいは、遺言を作成した後に新たに取得した財産があるなど、遺言に書かれていない財産をどのように相続したらいいのか分からないことがあります。このようなことはあってはなりませんが、可能性はゼロではありません。
以前も、財産をどのように分けるかをせっかく決めて遺言を作成していたにも関わらず、証券会社で運用していた上場株式についての記載がない遺言がありました。残高はおよそ800万円。存在を忘れてしまうような金額ではないように思いますが、実際にあった事例です。
遺言に記載された遺産分割方法に従って遺産分割を行うことになりますが、もしも遺言に記載されていない財産が見つかった場合は、その財産をどのように分割するか、相続人全員で遺産分割協議(話し合い)を行い、遺産分割協議書を作成する必要があります。遺言の内容に不満がある相続人がいたりすると、その財産はなんとしても自分のものにしようと主張してくることで争いに発展することになりかねません。
そのようなことにならないように、万が一のことに備えて、遺言には以下の事項(例)を記しておくようにしましょう。

(例)「遺言者は、本遺言に記載した以外に遺言者の有する財産があった場合、かかる財産の一切を●●に相続させる。」

このようにしておけば、後から発見された財産、書き漏れがあった財産があっても、思いどおりに相続させることができます。

③遺言執行者も指定しておこう

遺言執行者とは、その遺言を確実に実現させるための権限が付与されている人です。遺言執行者を指定しているとしないのとでは、遺言の実現にあたり大きく影響してくることがあります。遺言執行者は相続人でも構いませんし、第三者でも構いませんし、複数人でも構いません。最も信用できる人を指定しておくといいでしょう。

④付言事項も必ず書いておこう

付言事項とは、なぜそのような遺言を作ったのか、その経緯や思いを記しておくことです。思いや望みを記しておくことで、なぜそのような遺産分割になったのか相続人の理解が得られたり、無用な争いを回避できたりすることにもつながるのです。
(例)「付言事項 私の思いを皆に託すため、このように相続させることにした。どうか、私の思いを汲み取って納得してほしい。家族が助け合いながら暮らしていってほしい。今まで幸せな人生を本当にありがとう。」
この一文があるのとないのでは、遺言の重みがまったく違ってくると思います。

最後に

上記のことをすべて理解している方はそう多くはありません。
知らなくて当たり前ですから、やはり公正証書遺言を作る(ほぼもれなく遺言執行者をどうするか公証人が聞いてくれたりしますから少なくとも知らないままということにはなりません)か、専門家に相談しながら作成すべきだと思います。
自分では問題ないと思っていても、いざ相続が発生して遺言が無効になってしまった、争いに発展してしまった、といった不幸なことにならないように。

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貞方 大輔

立命館大学卒業後、大手生保を経て、アレース・ファミリーオフィスへ入社。
一般社団法人相続終活専門協会 代表理事

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