第22回 法定相続情報証明制度(法定相続情報一覧図)ご存じですか?(後半)

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貞方 大輔

2021-06-01

第22回 法定相続情報証明制度(法定相続情報一覧図)ご存じですか?(後半)

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前回に続き、法定相続情報証明制度についてご紹介します。
前回(前半)をご覧になっていない方は、ご一読いただいてから今回(後半)をご覧ください。

こんなメリットがあります

相続人の数(=集めなければならない戸籍謄本の数)が多く、手続きが必要な相続財産の種類が多い場合などにはメリットが大きいです。

メリット① 戸籍謄本の束が1枚の用紙に整理される

相続手続きにあたっては、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員分の戸籍謄本が必要です。このため、被相続人が本籍を何度も移動しているケース、相続人の数が多いケース、孫や甥姪、前妻の子などが相続人になるといった相続関係が少し複雑なケースでは、一言で戸籍謄本といってもかなりの枚数(束)になります。
法定相続情報一覧図の写しは、この戸籍謄本の束が1枚(複数枚になることもある)の用紙にまとまるため、持ち運びや郵送・管理が楽です。

メリット② 法務局(登記官)が戸籍を確認してくれる

自分たちで作成した法定相続情報一覧図に、集めた戸籍謄本等を添えて法務局に申し出しますが、提出された内容は法務局(登記官)によって誤りがないか、戸籍謄本を読み解いて確認してくれますので安心です。

メリット③ 法定相続情報一覧図の写しは無料!しかも必要なだけ交付OK!

複数の名義変更手続きを同時に行いたいときなどは、手続きごとに戸籍謄本の束を用意する必要があります。しかし、一つの束を用意するのに、数千円から多い人で1万円以上かかるうえ、足りなくなった場合は改めて戸籍謄本を取り直す必要がありました。
法定相続情報一覧図の写しは、無料で必要な枚数の交付を受けることができますし、足りなくなった際の再交付も無料です。法務局に提出した法定相続情報一覧図は5年間保管されますので、その期間内であれば何度でも無料で再交付してもらえます。再交付も郵送で行うことができます。

メリット④ 複数の相続手続きを同時に進めることができる

相続手続きにあたり提出した戸籍謄本の束は、多くの場合、手続き完了後に返却されます。返却されてきた束を、また別の相続手続きで使い回すことも可能です。しかし、提出と返却を繰り返し行っていると、非常に時間がかかってしまいます。預貯金口座の数が多いとなかなか解約が進まずお金がすべて戻ってくるまで時間がかかります。
一方、法定相続情報一覧図の写しは何枚でも交付してもらえるため、同時にいくつもの相続手続きを進めることができます。実務をやっていると、これは非常に大きなメリットだと痛感します。

デメリットもあります

法定相続情報制度にはメリットが多い一方、急いで名義変更を行いたいときや名義変更が必要な財産の種類が少ない場合などには不向きな一面もあります。

デメリット① 一度は自分で戸籍書類等を集めて、一覧図を作成する必要がある

法定相続情報一覧図は法務局で作成してくれるわけではありません。まずは相続人で作成する必要があります。作成した法定相続情報一覧図を法務局の登記官が戸籍謄本と照合して問題がなければ、その後の相続手続きで戸籍謄本の束の代わりとして使える、というものなので、イチからすべて法務局がやってくれるというわけではありません。
法定相続情報証明制度を利用するには、一度は戸籍謄本等を集める必要があります。そして集めた戸籍をもとに法定相続情報一覧図を作成し、法務局に提出するため、その分従来よりも手間が増えることになります。
このため、相続財産が2、3の銀行の預貯金のみなど、必要な相続手続きが少ない場合は、従来どおり戸籍謄本の束を使った方が手間が少ない可能性もあります。

デメリット② 法定相続情報一覧図の写しが交付されるまでに時間がかかる

法定相続情報一覧の写しは、必要書類を提出してから交付されるまでに1~2週間程度かかります。相続手続きを急いで進めたいときは時間のロスになるため、従来どおり戸籍謄本の束での手続きした方が早いでしょう。

デメリット③ 法定相続情報一覧図の写しだけでは手続きできないケースもある。相続放棄があった場合は要注意!

法定相続情報一覧図の写し1枚で、すべての手続きができるとは限りません。相続放棄の有無、遺産分割協議の有無やその内容(財産を誰がどのように相続するか)については、法定相続情報一覧図の写しを見ても記載されていないので分からないため、遺産分割協議書などの必要書類の作成が別途必要になります。法定相続情報一覧図に記載する情報は、誰が亡くなって、その相続で誰が相続人になるかです。そのため、相続放棄があり、新たに被相続人の親や兄弟姉妹が相続人になったといった情報は記載されません。よって、新たに相続人になった人との関係を確認するには、その分の戸籍謄本を追加で提出しなければなりません。相続放棄があった相続では、この制度を利用するのはふさわしくないといえます。

最後に

法定相続情報一覧図の写しは、戸籍謄本の束の代わりに使えるため、相続財産の種類が多い場合や相続関係が複雑な場合には非常に利用価値が高いです。私たちも実務を行うにあたってはよく作成しています。
一方で、手間や時間がかかるといったデメリットもあるため、利用した方が良いか否かについては検討する必要もあるでしょう。
相続税申告など相続の手続きを専門家に依頼する場合には、併せて法定相続情報一覧図の作成や申し出を代行してもらうことも可能ですので、ご相談されるとよいでしょう。

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貞方 大輔

立命館大学卒業後、大手生保を経て、アレース・ファミリーオフィスへ入社。
一般社団法人相続終活専門協会 代表理事

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