
今回は、介護事業者及び身元保証サービス業者等に対する遺贈等についてご説明します。
※本記事と関連する過去の記事
https://egonsouzoku.com/magazine/magazine-1022/
https://egonsouzoku.com/magazine/magazine-1221/
1 介護・身元保証等に関するサービス
高齢化社会の進展に伴い、一人暮らしの高齢者が増加し、介護サービスや医療機関への入院・介護施設等への入居の際の身元保証人の手配に関するサービス等がより注目されるようになりました。
しかし、その利用者は判断能力の低下が懸念される高齢者であることが多く、その事業者と利用者との間に利益相反関係が生じやすいため、特に、事業者に対して遺贈や死因贈与を行う場合には注意が必要です。
2 遺贈・死因贈与
遺贈とは、被相続人の死亡によって効果が生じる遺言によって、財産を他人に無償で与える行為をいいます。遺贈には当事者間の合意は必要なく、単独行為として一方的に行うことができますが、一定の方式(自筆証書遺言や公正証書遺言など)が要求されます。
死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力を生じる贈与であり、あくまで当事者間の合意によって成立する「契約」です。
第三者に財産を与えるという点は、両者に共通しています。
3 利益相反関係
事業者が、利用者との間で、死因贈与や遺贈を受けることは、本来、それが真に利用者の意思に基づくものであれば、不適切とはいえません。
しかし、利用者が事業者に対して遺贈・死因贈与を行う場合、事業者にとっては、利用者へのサービス提供費用を抑えるほど、将来遺贈として受け取れる財産の額が増える、という構造的な利益相反関係が認められます。これにより、生前の利用者に対するサービスの質が低下し、紛争が生じるリスクがあります。
このような利益相反関係を背景とした遺贈・死因贈与は、その有効性が争われる可能性があります。特に、以下の点には注意が必要です。
事業者が遺贈・死因贈与を受けることをサービス提供の条件にしたり、契約に含ませたプランを設けたりすることは、遺贈・死因贈与が真に利用者の意思に基づくものであるか疑義が残る可能性が高いです。
また、身元保証契約と死因贈与契約が合わされた契約について、社会的弱者である高齢者に身元保証を提供する代わりに、合理的な理由なくその死亡時の不動産を除く全財産を無償で譲渡させるものは、暴利行為と評し得るものであって公序良俗に反し無効であるとした裁判例があります(名古屋高裁令和4年3月22日判決)。
4 遺言能力
事業者が遺贈を受ける場合、主な利用者が高齢であるため、利用者の死後に相続人との間で遺言能力の有無をめぐってトラブルが生じやすい点にも留意が必要です。
遺言が有効であるためには遺言時に遺言能力があったことが必要です。
遺言能力とは、遺言内容を理解し遺言の結果を弁識し得るに足る能力のことです。この能力の有無の判断については、遺言者が認識していた事実及び特定の者に利益を与えることに照らし合わせた合理性が重要です。
家族に一切財産を相続させず、全財産を事業者に遺贈する内容の遺言は、不自然であるとして、遺言能力が否定され、無効とされるリスクがあります。
5 トラブル防止のための注意点
上記のようなリスクを回避し、後のトラブルを未然に防ぐためには、利益相反関係を十分に理解して注意し、事業者から提供されるサービス内容や費用、契約解除時の取扱いだけでなく、遺贈・死因贈与に関する取扱い方針等についても確認することが重要です。
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