第41回 借地権と相続②

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熊本 健人

2021-04-27

第41回 借地権と相続②

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前回に続き、借地権と相続について、ケースに基づきご説明します。

<CASE②>
 XはAから甲土地を賃借し、甲土地上にX名義の乙建物を建て、Xの長男Yと一緒に暮らしていた。その後Xは死亡し、相続人である長男Yと次男Zとの間の遺産分割協議の結果、Yが乙建物を取得した。YはAに無断で甲土地上の乙建物に住み続けることができるか。

借地権の相続

 借地権は、「被相続人の一身に専属したもの」(民法896条但し書)、すなわち、被相続人のみに帰属すべきものであるとは認められません。また、借地権は可分債権ではなく相続によって当然に分割される権利でもありませんので、相続財産に含まれ、遺産分割の対象となります。したがって、借地権付きの建物を相続により取得した場合、相続人は、借地権も同時に取得することになります。この場合、相続人は、相続開始時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することになるため、借地権を相続するに際して、地主の承諾を得ることは必要ありません。もっとも、遺産分割協議が完了した後、借地上の建物を取得した相続人は、地主に対し、自身が新たな借地人になった旨を事実上知らせておく必要はあります。
 CASE②では、YはAの承諾を得ることなく、甲土地上の乙建物に住み続けることができます。但し、Yは自身が新たな借地人になった旨Aに対して通知しておく必要があります。

地主が変更になった場合

 地主が死亡して相続が生じた結果、地主が変更になった場合、借地人は土地を返さなければならないのでしょうか。
 この点、土地の賃借権に相続が生じた場合と同様、借地契約上の賃貸人たる地位を相続人が承継することになりますので、借地権は何ら影響を受けず、契約内容が変わることもありません。

では、地主が第三者に土地を売却した結果、地主が変更になった場合はどうでしょうか。
この場合は、新たな地主に対して借地権を対抗できなければ、建物を収去し土地を明け渡さなければならなくなります。すなわち、借地権を第三者に対して対抗するためには、建物に借地人名義の登記がなされており、借地上に建物が存在していることが必要になりますので(借地借家法第10条第1項)、これらの要件を満たしていない場合は、新たな地主に対抗することができないことになります。 
例えば、建物の登記名義が子ども名義になっている場合は、借地の名義人と建物の登記名義人が同一でなく、対抗要件を欠いている状態ですので注意が必要です。
また、借地上に登記がなされている建物が存在することも第三者に借地権を対抗するためには必要になります。万一、火事や地震等によって建物が滅失した場合は、滅失してから2年間はその建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示する必要がありますので、注意が必要です(借地借家法第10条第2項)。

【借地借家法】
(借地権の対抗力)
第十条 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
2 前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。

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熊本 健人

学習院大学法学部卒業
神戸大学法科大学院修了

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