第34回 遺産分割協議のやり直し

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熊本 健人

2020-12-22

第34回 遺産分割協議のやり直し

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2020年の更新も今回で最後となりました。

今回は、遺産分割協議のやり直しについて見ていきます。一度成立した遺産分割協議について、何らかの理由により遺産分割協議をやり直したいと考えた場合、やり直しが認められるでしょうか。二回に分けて具体的な3つの事例を解説・検討してみましょう。今回の3つの事例のうち1つ目を解説したいと思います。

CASE1
Aには妻Bと子CDEがいる。Aが死亡しB~Eで遺産分割協議が行われた。その際、長男Cは、BDEに対し、母Bと同居し扶養すること、先祖の祭祀を承継し各祭事を誠実に行うことを約束したうえで、長男Cは法定相続分より多い遺産を取得することとなった。ところが、遺産分割成立後、長男Cは母Bを虐待して扶養せず、祭祀の承継も行わなかった。
BDEは遺産分割協議をやり直したいと考えているが、長男Cはこれを認めない。やり直すことができるか。

遺産分割協議の解除

遺産分割は、相続人全員で行われる一種の契約です。そうであれば、CASE1のように、相続人の1人が他の相続人に対して債務を負担したにもかかわらず、その債務を履行しない場合、債務不履行を理由に遺産分割協議を解除することができるようにも思えます。

しかしながら、判例は、債務不履行解除を認めていません(最判平元・2・9判時1308・118)。その理由は、遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し、その後は協議において債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人との間の債権債務関係が残るだけと解するべきであり、このように解さなければ民法909条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害されることになるからとしています。要するに、遺産分割協議が成立すると遺産分割それ自体は当然に終了してしまい、遺産分割協議の際に相続人の1人が負担した債務不履行を理由に、遺産分割協議をやり直すことはできないということです。


(遺産の分割の効力)
第九百九条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

もっとも、上記判例は、共同相続人の全員が既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられるものではないことも指摘しています。したがって、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議をやり直すことも認められることになります。

CASE1では、長男Cが約束を破り母を扶養せず、祭祀を承継しなかったとしても、長男Cの債務不履行を理由に遺産分割協議を解除することはできないことになります。したがって、BDEは、長男Cの同意があれば遺産分割協議を合意解除した上で遺産分割協議をやり直すことができますが、Cが反対している以上、遺産分割協議を解除することはできず、遺産分割協議のやり直しはできないことになります。

以上

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熊本 健人

学習院大学法学部卒業
神戸大学法科大学院修了

親の介護

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