進む高齢化などを背景に、相続人が誰もいない(全員亡くなった)、あるいは兄弟姉妹のみといったケースが増えています。唯一の相続人である兄弟姉妹との仲が問題なければいいのですが、不仲の場合、兄弟姉妹に財産を相続させたくないと思う方もいらっしゃるでしょう。
<ご参考>「第7回 兄弟姉妹に遺留分はありません」(2020.10.13)
そんな場合、預貯金や各金融資産、不動産といった財産をどのように相続、遺贈していくのかという問題はもちろん、入院や手術をしたとき、そして万が一(死亡)のときに必要となるお金への備えとして生命保険があるわけですが、その死亡保険金受取人(以下、「受取人」とします)についても、適当な相続人がいなければ、誰にするのかといった問題が出てきます。本来、被保険利益の観点から最も近い親族を設定することになるのでしょうが、「不仲で疎遠な兄弟姉妹には受け取ってほしくない」とか「兄弟姉妹もおらず、信頼のおける友人知人を受取人にしたい」といった、いわゆる第三者にしたい(しなければならない)と考える方もいらっしゃるでしょう。実際、第三者となっている既契約もある程度は存在しますし、今後は増えてくることも考えられます。たとえ相続人が誰もいなくても「最低限の葬儀くらいはしたいし、納骨その他死後の事務整理やその精算に必要なお金は保険金で用意しておきたい」という方もいらっしゃるでしょうから。
なお、第三者を受取人に設定、変更できるかどうか、できる場合の死亡保険金上限額などは保険会社によって取扱い基準や事務手続きが異なります。
また、ご存じでない方も多いですが、遺言によって死亡保険金受取人を(第三者に)変更することも可能です(保険法第44条)。
では、受取人を第三者に設定・変更できた、あるいは遺言で受取人を変更したとして、被保険者(=被相続人)が死亡した場合、受取人が確実かつスムーズに死亡保険金を受け取れるようにしておきたいですよね。請求手続きや必要書類の詳細は、保険会社によって若干の違いはあるでしょうが、「保険金請求書」と「死亡診断書」の提出は、どこの保険会社も必須でしょう(書類の呼び名はそれぞれかもしれませんが)。
「保険金請求書」は保険会社から受取人が受け取って記入すればいいですが、「死亡診断書」やその他の必要書類(例えば、亡くなった方の戸籍謄本が考えられるでしょうか)がきちんと揃えられるかということも生前に確認しておきたいところです。
死亡診断書は、“遺族からの請求”があれば病院が発行してくれますが、遺族ではない第三者からの請求には応じてくれないと考えられます。よって、もし遺族がいれば、その遺族の協力を得て、死亡診断書を取得することになろうかと思いますが、(受取人にしてもらえなかった)遺族がすんなり協力に応じてくれるとも限りません。ましてや敵対視されることも考えられます。もちろん遺族が誰もいなければ、死亡診断書の取得可否やその他取りうる手段について保険会社に確認しておく必要があります。
なお、遺言に、遺言執行者を指定しておけば、遺言執行者は少なくとも役所にて「死亡の事実が分かる戸籍謄本」の取得は可能です。しかし、死亡診断書あるいはそれに代わる証明書等を確実かつスムーズに取得できるかどうかは断言できません。
第三者を受取人にしている場合は、きちんと保険会社や担当者に必要書類や手続き方法について、受取人の方と一緒に生前に確認しておくことをオススメします。必要なときに保険金が受け取れない、保険金を受け取るのに一苦労…なんてことがないように。