第56回 「嫌いな家族に遺産が相続されてしまうなら、全部売っちゃいましょう!」の巻

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江幡 吉昭

2020-08-07

第56回 「嫌いな家族に遺産が相続されてしまうなら、全部売っちゃいましょう!」の巻

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これは、具体的事例で見る「遺留分侵害額請求権と代襲相続」のお話です。

相談者の田中さん(仮名)はお母さまが亡くなり、ご相談に来られました。
被相続人はお母さま。相続人は田中さん(長女)と兄(長男)の二人。
お母さまが所有する自宅不動産の持ち分を相続することになったのです。
兄は、妻と子ども3人の5人家族。田中さんは、未婚(子どもなし)

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母の遺言は無視!?実兄が「遺留分侵害請求」を提出

「遺留分侵害額請求」とは、不平等な遺言や贈与によって「遺留分(最低限相続できる権利)」を
受け取れなかった人が、遺留分の取り戻しを請求することです。

相続する不動産(土地と建物、田中さんの実家)は、当初田中さんの父親が所有していましたが、その父親は母親が他界する5年前に他界。その際、母親1/2、兄と田中さんがそれぞれ1/4を相続しました。
その後、母親は長男(兄)と仲が悪かったため、生前に遺言で『実家については自分の持ち分を長女(田中さん)に全て相続させる』ことにしました。

しかし、母親の死後、遺言の内容を知った長男は納得できません。
優先されるのはお母さまの残した「遺言書」ではありますが、
兄は遺留分(今回の場合、民法上では実家の1/4が兄の持ち分)を田中さんに請求したのです。

田中さんは弁護士に相談し、遺留分を渡したくないと伝えました。しかし、争っても勝ち目がないと弁護士に諭され、渋々応じることにしたのです(遺留分は現金で精算しました)。

こうして相続自体は決着しましたが、田中さんと兄の間に大きな遺恨を残してしまいます。
また、田中さんと兄は、それぞれ自宅を保有しているため、引き継いだ遺産(実家)は「空家」状態。
これがまた、新たな問題を生んでしまったのです。

兄が実家の売却を持ち掛ける!その魂胆とは!?

実家を利用する予定も無いため、ある日、兄が「売却してそれぞれの持ち分(田中さん3/4、兄1/4)で分けたい」と田中さんに持ち掛けてきました。それぞれ別々の場所で生活しており、建物の老朽化も著しく維持管理が大変だという理由でした。
また、兄は実家が高値で売却できるのであれば、田中さんの持ち分を自分が買い取り、持ち分が100%となった状況で売却したいということでした。兄は明言しなかったものの、実家は商業地域に存しており、希少性が高く、高さのある建物が建てられるため、高値で売れる可能性があると考えていたのでしょう。

兄、「不動産の売却」を目論む

実家は、駅徒歩3分の商業地域内に存していましたので、建ぺい率、容積率ともに良好で多岐に渡り不動産活用ができる希少な物件です。
よって通常より高い価格で購入を希望する不動産業者もいましたが田中さんは思い入れのある実家の売却には賛同できませんでした。

しかも、兄は田中さんから買い取ろうとした(高く売れるであろう)実家の持ち分を、通常の取引価格と同等か、それよりも低い価格で買い取れるように水面下で不動産業者と交渉していたことも後に判明しました。

兄弟姉妹の代襲相続は1回のみ可能(再代襲は×)

“売る・売らない”でもめているうちに、母の死後1年が経過しました。そんな中、田中さんは『ある相続のルール』を知り、売却の決断をします。
それは「代襲相続」です。
(※「代襲相続」とは、本来相続人になる人が死亡などの理由で相続出来ない場合、その人の子どもが
代わりに相続する制度)

田中さんは独り身のため、残る親族(相続人)は兄のみです。もし、田中さんが先に他界した場合、田中さんの財産はすべて兄に相続されてしまいます。一方、兄が先に他界し、次に田中さんが亡くなった場合、“相続人がいない?”のではなく、兄の子どもたちに田中さんの遺産が“代襲相続される”ことになってしまうのです。

総評〜兄や、兄の子どもに相続されるのは嫌!使いきった方がお得!?〜

今回のケースは、田中さんが独り身ということもあり、“お金や自宅などの財産を残しても、結局は兄や兄の子ども(甥姪)に相続されてしまう”ということが判明したため、それであれば不動産を現金化して、自分(田中さん)の余生の生活費や交遊費に充てて、使い切ってしまった方が得策!と考えて実家の売却となりました。
(結局、田中さんは、兄に持ち分を売ることはせず、そのままの持ち分で不動産業者に売却)

相続してから3年以内に自宅等を売却すると、支払った相続税に応じて譲渡所得税も安くなります。実家を“売る・売らない”は相続の手続き終了後、必ず話題(問題)になることです。メリット・デメリットをよく考えて決断するようにしましょう。

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江幡 吉昭

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