第3回 もし遺産分割協議後に遺言が見つかったら?

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貞方 大輔

2020-07-14

第3回 もし遺産分割協議後に遺言が見つかったら?

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被相続人(亡くなった人)が遺言を作成していなかった場合、遺産を分割するためには「遺産分割協議書」が必要になります。(相続人が一人だけの場合や、複数人いても不動産を法定相続分どおりに共有名義に登記するだけの場合は不要です。)
遺産分割協議書がないと、相続税の申告ができない、被相続人名義の金融資産や不動産の名義変更ができない、といった不都合が生じることになります。

遺産分割協議書とは、被相続人の遺産を①誰が、②どの財産を、③どのくらい相続するのか、について具体的に記載し、相続人全員の署名押印(=同意)のうえ作成するものです。
一方、相続における争い、いわゆる“争う族”の火種は、この遺産分割協議の時に起こることが非常に多いのです。相続人たちがそれぞれの取り分を主張し合うわけですから、揉め事になりやすいことは容易に想像できるでしょう。

例えば、夫が亡くなったとします。
夫は自筆証書遺言を作成していたにも関わらず、死後、妻や子といった相続人たちによって発見されなかったため、相続人たちは遺言が存在しないものとして、全員で遺産分割協議のうえ、遺産分割協議書を作成することになります。
幸いにも、揉め事になることもなく、遺産分割協議は終了。作成した遺産分割協議書をもとに相続税申告や金融資産、不動産の各種名義変更を進めることになります。

しかし、夫の遺品整理も終わりかけたある日、夫が書いた遺言が見つかったのです。
(自筆証書であるため家庭裁判所の検認を受けて)遺言を開封したところ、そこには相続人たちで決めた遺産分割協議書の内容とは大きく異なる遺産分割内容が記載されていました。

さて、このような場合、どうすべきなのでしょか?
せっかく相続人全員で決めて作成した遺産分割協議書が無駄になるのでしょうか…
結論から言えば、相続人全員が遺言書の内容とは異なる遺産分割協議を行ったことに同意しているのであれば、作成した遺産分割協議書のとおりに遺産分割しても構いません。これは、上述のように、後から遺言が見つかった場合に限らず、初めから遺言が存在していたとしても、相続人全員が同意しているのであれば、遺言ではなく、遺産分割協議に則って分割しても構わないのです。つまり、必ずしも遺言に従わなくてもよいのです。

せっかく被相続人が遺言を書いたのに…と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、遺された相続人全員が合意すれば、それが優先されることになるのです。
しかし、あくまで相続人全員の同意が大前提です。遺言が後から見つかり、相続人のうち1人でも「やはり遺産分割協議書ではなく遺言のとおりに分割すべきだ」と主張すれば、遺言のとおりに分割し直すことになるでしょう。尚、遺言に時効はありません。相続発生後、何年経っていたとしても遺言の効力が失われることはありません。

遺産分割協議がまとまらず、紛争に発展することはよくある話です。そんなときは、法的効力のある遺言が最優先されることになりますので、やはり遺言の存在意義は非常に大きいといえます。

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貞方 大輔

立命館大学卒業後、大手生保を経て、アレース・ファミリーオフィスへ入社。
一般社団法人相続終活専門協会 代表理事

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