当サイトをご覧いただいている方の中には企業経営者も多いと思います。そこで今回は旬のニュースを取り上げたいと思います。
支払った保険料の全額が損金に算入でき、かつ貯蓄性の高い法人契約の生命保険(一般的には生活障害定期保険と呼ばれています)の保険が、全額損金ではなくなる可能性が出来ています。
◆「節税保険」実態解明へ 金融庁、商品設計を問題視(朝日新聞デジタル2018年6月29日)
これらの生命保険の法人契約の税制に関してはいくつか税制の変更があった前例がありました。前例の一つ目は10年前です。全損商品の代表格であった逓増定期保険は、2008年2月末に税制改正により全部損金扱いだったものが、半分損金となっています。最近では6年前の2012年4月下旬に全額損金算入であった終身がん保険が、半分損金になってしまいました。いずれも全部損金で落としつつ、高いキャッシュバリューのもので、所謂「法人税払うなら保険にする」という選択を多くの非上場企業の経営者がしたものです。今回の記事を読みますと、来年の3月末に税制改正が実施され、パブリックコメント(要は一般の方意見のべていいですよというもの)後、半損になってしまうのではないか?と思われるような記載ではあります。
それでは今回の対象となる全部損金で落ちてしまう商品はどんなものなのでしょうか?
これは一般には「生活障害定期」というような名前で販売されています。一定の障害状態になると保険金が出るという保険としての特色はあるものの、実際は「支払保険料の全額を損金で落としながらお金を貯める」というもので、貯蓄率と言える解約返戻率は5年で80%、10年で90%前後が一般的です。漢字系の大手生命保険会社はもちろんのこと、外資系、損保系保険会社含めかなりの数の会社がこの手の商品を扱っています。歴史的には一部外資系生命保険会社の数社が10年以上前からこぢんまりと扱っていたものの、この数年で10社以上が参入してきたように思います。
生命保険の税制の変更は上記前例のように、変更があったとしても、前例では「既に契約した契約者」は守られています。逓増定期保険しかり終身がん保険しかりです。当時税制の変更前に逓増定期保険や終身がん保険に加入された法人は今も「半損ではなく全額損金の経理処理が認められて」います。ということは、今回も、全部損金での経理処理が許されるうちに新規でこういった保険に加入しておいた方がいいという中小企業が増えるのではないでしょうか。
最後に、記事の中では今年度末(2019年3月)に何らかの行政措置を判断すると出ていますが、個人的には保険会社が事前に金融庁にお伺いをたて、認可をもらってこういった保険商品を発売しているわけですし、業界の中でも行政にも力のある漢字系の生命保険会社が販売している以上、「来年の3月末で全額損金計上終了」とは考えていません。もちろんあくまで個人の見解ではありますが。