22.遺言の執行(その3):遺言執行者①

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酒井 勝則

2020-01-31

22.遺言の執行(その3):遺言執行者①

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はじめに

前回、遺言の執行の一環として行われる検認手続きの効果及び注意点についてご紹介しましたが、今回は、遺言執行の中心人物となりうる遺言執行者についてご紹介します。
従前ご説明したとおり、遺言書は、内容面に気を配る必要があることは当然ですが、その遺言書の内容をスムーズに実現することもとても重要です。すなわち、遺言書の効力が生じるときに、当然ながら遺言者は存在しませんので、遺言者に代わって遺言の内容を実現する者が必要となり、これが遺言執行者です。
以下では、遺言執行者の意義、遺言執行者を必要とする場面やメリット、遺言執行者になることができる者についてお話していきます。
 

遺言執行者の意義

遺言執行者とは、その名のとおり、遺言を執行する者です。遺言の執行とは、遺言の内容を実現することであり、遺言に基づく権利の実現とそれに関連して必要となる事務を行うことをいいます。

遺言執行者を必要とする場面とは

遺言書によって実現できること、つまり遺言事項は、法律上で定められています。

その中でも
・未成年者の後見人の指定(民法第839条)
・後見監督人の指定(民法第848条)
・相続分の指定又はその委託(民法第902条)
・遺産分割の禁止(民法908条)
・相続人間の担保責任の指定(民法第914条・911条~913条)
・遺言執行者の指定またはその委託(民法第1006条1項)
・遺留分減殺の制限(民法1034条ただし書)
などの遺言事項は、遺言の効力発生とともに当然にその内容が実現され、遺言の内容を実現するための行為(手続き等)は特段必要とされません。

他方で、以下の遺言事項などは、遺言の執行を経なければ、法的効果が実現されません。
・相続人の廃除又はその取消し(民法第893条・894条2項)
 →家庭裁判所に廃除の申立てをして、審判をしてもらうという遺言の執行が必要。
・遺贈(民法964条)
 →例えば不動産の場合、所有権移転登記を備えるという遺言の執行が必要。
・認知(民法第781条2項)
 →戸籍の届け出という遺言の執行が必要。

 また、遺言執行者が必要となる場面は、上記のような法的効果が問題となる場面だけではありません。例えば、遺贈あるいは遺産分割方法の指定により特定の相続人に預金債権を帰属させる内容の遺言が存在する場合、当該預金口座の名義を当該相続人に変更するか口座を解約するなどの手続きを要します。この手続きにあたり、遺言執行者がいなければ、他の相続人の協力が必要となる場合があります。ところが、遺言の内容に納得しない他の相続人が手続きに非協力的な場合、最終的には裁判手続きによって解決する必要が生じます。他方で、遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者の協力のみで、上記手続きを実行することが可能となるのです。
 

遺言執行者を指定しておくメリットとは

遺言執行者を指定することのメリットとしては、①相続に関する手続きについては遺言執行者が単独で行う権限があるので、他の相続人が勝手に処分したり、手続きを妨害したりするような行為を防ぐことができ、遺言の内容を確実に実行できること、②遺言執行者が相続人全員の代表として手続きをすることになるので大幅に時間と労力をカットすることができ、迅速に処理できることなどが挙げられます。①に関する民法上の規定は、以下のとおりです。

(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
 

遺言執行者になることができる者

遺言執行者になることができる者には一定の制限があります。具体的には、未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができません(民法第1009条)。しかしながら、未成年者及び破産者に該当しなければ、特別な資格がなくとも遺言執行者に就任することは可能です。これは、相続人でも遺言執行者に就任できることを意味します。もっとも、遺言執行者は、公平中立な立場である必要があることから、相続人を遺言執行者とすると、他の相続人との関係で新たな紛争の原因になる可能性もあります。したがって、遺言執行者には、相続人ではなく公平中立な第三者の専門家を指定することをおすすめします。
また、遺言執行者は、一個人だけでなく会社などの法人でもかまいません。遺言執行者を法人とすることのメリットは、遺言執行者として指定された個人が不慮の事故等により遺言者よりも先に亡くなるというような事態を回避できることにあります。もっとも、法人の場合も、倒産等により法人自体が消滅する可能性は否定できませんので、一概にどちらが有利というものでもありません。

 遺言執行者の意義や指定するメリット、遺言執行者になることができる者に関する説明は以上になります。
次回は、遺言執行者を指定する方法や職務内容等についてご紹介します。
 

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酒井 勝則

東京国際大学教養学部国際関係学科卒、
東京大学法科大学院修了、
ニューヨーク大学Master of Laws(LL.M.)Corporation Law Program修了

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