【第20回 遺言の執行(その1):検認①】

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酒井 勝則

2019-12-03

【第20回 遺言の執行(その1):検認①】

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はじめに

前回、遺言の解釈や相続させる旨の遺言についてご紹介しましたが、今回からは、遺言の内容を実現する“遺言の執行”についてご紹介させていただきます。
遺言の内容が、相続分の指定や後見人の指定などの場合、その遺言は相続開始と同時に効力を生じ、効力発生とともにその内容が実現されるため、特に遺言の内容を実現するための行為は必要ではありません。
他方で、遺言の内容が不特定物の遺贈の場合には、目的物を特定して受遺者に引渡しをする必要がありますし、遺言で相続人としての地位を奪う「廃除」をする場合には、家庭裁判所に審判の申し立てをしなければなりません。
このように、遺言の効力が発生した後で、遺言の内容を実現するにあたり、所定の手続きを踏まえる必要があり、この手続きを実行することを「遺言の執行」といいます。
そして、遺言の執行をする前提として、公正証書遺言以外の遺言については、家庭裁判所における「検認」という手続きをする必要があります。
以下では、検認の意義、手続きの流れについてお話します。
 

検認とは

検認とは、遺言書の偽造・変造を防止し、保存を確実にする目的でなされる、遺言書の現状(遺言書の方式・記載などの外部的状態)を調査・確認する手続きです。
遺言書の保管者または遺言書の保管者がいない場合には遺言書を発見した相続人は、相続の開始を知った後、遅滞なく、相続開始地(遺言者の住所地)を管轄する家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません。
法律の条文は以下のとおりです。

民法
(遺言書の検認)
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

家事事件手続法
(審判事項)
第三十九条 家庭裁判所は、この編に定めるところにより、別表第一及び別表第二に掲げる事項並びに同編に定める事項について、審判をする。

別表第一
百三 遺言書の検認 民法第千四条第一項


 

検認手続きの流れ

検認手続きの流れは以下のとおりです。

① 家庭裁判所に対する遺言書検認の申立て

  申立てをする権利者(申立人)は、遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人です。申立人は、所定の申立書に遺言者、相続人等の関係者の氏名等を記載し、申立の理由として、遺言発見時の状況や保管するに至った経緯、保管の状況、遺言の状態などを記載して、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に提出します。
また申立書の添付書類として、遺言者が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍(除籍)謄本、相続人の戸籍謄本、相続人であること(遺言者との関係)を明らかにする戸籍謄本、遺言者の住民票除票などを提出します。

② 家庭裁判所から相続人、受遺者その他の利害関係人への通知

  申立人による申立てがなされると、家庭裁判所は、実際に遺言書を検認する期日を定めて、申立人、相続人、受遺者等に対して通知をします。通知を受けた者は、必ずしも検認手続きに立ち会う必要はなく、家庭裁判所は、立会いの機会を通知により与えていれば、検認手続きを実施することができます。

 ③ 家庭裁判所による調査

   家庭裁判所は、検認期日において、遺言書が、どのような用紙何枚に、どのような筆記用具で、どのような内容が記載され、日付、署名、印影はどのようになっているかなどの事実状態を調査します。そして、調査の結果について検認調書という書面を作成します。

④ 申立人に対して検認済証明書を付した遺言書を返還、検認済通知の送付

   検認調書を作成後、裁判所書記官が、検認に立ち会わなかった相続人、受遺者その他の利害関係人に対して遺言書を検認した旨を通知します。そして、申立人に対して、遺言書を検認したことを示す検認済証明書を付けて、遺言書を返還します。また、立会いをしなかった相続人等の関係者に対し、検認済通知が送付されます。

 検認の意義、手続きの流れに関する説明は以上になります。
次回は、遺言の執行の一環としての検認の効果や注意点についてご紹介します。
 

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酒井 勝則

東京国際大学教養学部国際関係学科卒、
東京大学法科大学院修了、
ニューヨーク大学Master of Laws(LL.M.)Corporation Law Program修了

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