第35回 遺言とは?

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江幡 吉昭

2019-11-29

第35回 遺言とは?

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遺言の効力

 遺言は、民法で定められた法律行為で、自分の死後に意図された効果が法秩序によって保障されます。
 つまり、自分で書いた遺言書は、その内容が法秩序によって保障されるわけですから、遺言者(被相続人)の死亡後、相続争いといった親族間の紛争を回避する上で重要なものとなります。
 自分で「よし!今日は時間をとってじっくり遺言書でも書こう」という気になることはなかなかないでしょう。しかし、人は遅かれ早かれいつか必ず亡くなり、相続が発生します。そう考えると遺言を書くということは、自分の人生を振り返り、各相続人にどのような財産を残していけば良いのかを考える上で重要なことになります。
 「遺言を書いてみませんか」という啓蒙活動は、一人の人物の内なる人生を見つめなおすきかっけを作り、家族という表現し尽せない密接な共同体を円滑に存続させていく意義のある活動といえるのではないでしょうか。

 そのような法律で守られているという遺言とは、どのような行為なのかを見ていきましょう!
 まず、遺言は相手方の受領を必要としない「単独行為」です。つまり、遺言とは「死者の最終意思表示」とも言えるわけで、相手方の気持ちやその遺言内容によって生じる取引の安全などは一切考慮する必要はありません。

 とは言っても、自分の意のままその日の気分で遺言を作成するのも気が引けるので「妻と相談しながら書いてみよう」と考え、さらには「夫婦共同で遺言を作成しよう」とした場合、この共同遺言は法律上成立するのでしょうか。先ほど、遺言は「単独行為」であると記しましたが、次の事例をもとに検証してみましょう。 

共同遺言は有効?無効?

 <事例>
  甲さんと乙さんは、結婚40年のおしどり夫婦でした。2人にはA、B、Cの3人の子がいました。甲さんと乙さんは、平成30年2月10日の日付で「自分たちの財産について、1/2は同居している子Aに、残りの1/4ずつを子Bと子Cに相続させる」という遺言を夫婦共同で作成しました。
  このような遺言は法律上、有効となるのでしょうか?

 答えは、共同遺言は法律上、無効となります。民法では、共同遺言は禁止されています(民法975条)。
 これは、遺言はいつでも自由にその内容を撤回することができるのですが(民法1022条)、共同遺言を認めてしまうと遺言の撤回が自由にできなくなってしまう恐れがあるからです。また、夫婦の一方の遺言内容が無効となった場合、他方の遺言内容をどのように処理したらよいのか法律上問題になることなどから禁止されています。
以上のように、遺言とはまさに「単独行為」であり、夫婦であっても「共同遺言」は法律上無効となります。
 

遺言と法定相続分の関係について

遺言は、被相続人の最終意思を尊重しようという制度なので、法定相続分に優先することになります。
つまり、もし遺言内容が法定相続分通りでなかったとしても、遺言通りに財産を分けていかなければならくなくなります。

 こうして見ていきますと、遺言の効力ってかなり強力であることが分かりますね。
 では、このような強力な効力を持つ遺言は、何歳になったから書けるのでしょうか。これも民法で明確に定められています。
 

遺言ができる者

 遺言は、15歳以上で意思能力があれば誰でも作成できます。
 そして、未成年者が書いた遺言であっても、法定代理人(通常は親権者)の同意は不要です。

 では、被保佐人や被後見人が書いた遺言はどうなのでしょうか。
 これについては、被保佐人については、保佐人の同意なく遺言ができます。
 被後見人については、本人が「本心に復しているときに、かつ、医師2人以上の立ち合いのもとにおこなわれなければならない(民法973条)」となっています。被後見人であっても、条件つきとはなりますが、作成することができる場合もあるということですね。

 今回は、遺言の効力についてお話しさせていただきました。
 次回は、遺言の撤回や無効取り消し事由などについて詳しくお話しさせていただきます。 

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