第30回 終活② デジタル遺品

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江幡 吉昭

2019-10-08

第30回 終活② デジタル遺品

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前回は「終活」の新しい捉え方として、終活をすることで新しい人生を始めるという「終わりが始まり」というお話をしました。今回も引き続き、ぜひ知っておいていただきたい新しい終活の内容である「デジタル遺品」についてお話しします。 

「デジタル遺品」とは

「デジタル遺品」って何でしょう?

預貯金や上場株式・投資信託において、ネットバンキングやネット証券の口座を持っている場合のログインIDやパスワードがそれに該当します。
しかしながら、デジタル遺品となるものは、実はその他にもたくさんのものがあるのです。
『パソコン、スマートフォン、デジタルカメラ、外付けハードディスク、USBメモリの中に記録されているデータ』、『SNS、Webメール、ネットショッピング、音楽・動画・書籍等の有料サービスのIDやパスワード』、『クラウドストレージ上のデータ』などなど・・・。カタカナばっかりですね・・・。皆さんご自身、すでにお持ちのものが多く該当しているのではないでしょうか?   

「デジタル遺品」の問題点

近年、パソコンや携帯電話・スマートフォンの所有率は上がってきています。しかし、これらのパスワードなどの情報をご家族と共有されている方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか?皆さんはいかがですか?
答えはきっと“ノー”でしょう。
これが万が一のときに、見たくても見れない(見られたくないのに見られてしまう)デジタル遺品となってしまうわけです。その結果、トラブルになってしまう可能性を秘めているわけです。

したがって、通常目に見える遺品とは違い、デジタル遺品については「新しい終活」として別の取り組みが必要となっているのです。個人が所有していたパソコンやスマートフォンを残された家族が相続しても、取り扱いに困ってしまいますよね。その中に大切な情報や思い出の写真が残っているかもしれない。でも、パスワードがかかっていて開こうにも開けない。処分するにも情報が流出するかもしれないので処分の方法に困る、という状況が目に見えます。
さらに、例えばネットバンキングなどのID等はその口座自体の存在を家族が知らなければ、相続そのものに大きな影響を及ぼしてしまいます。もし、ネットバンキングに多額の資産を残していて、その存在を家族に知らせることなく相続が発生してしまったら・・・。
実はこんな話があります。
故人がネット上でFX口座を開いていて、取引を有効にしたまま死亡。その後、その取引が1,000万円単位の多額の損失を引き起こし、遺族にその請求が届いた・・・。
さぁ、どうなることでしょう。
金融資産以外にも、特に会社経営者や個人事業主は、紙媒体ではなくデータとして資料を残していることも多いでしょう。パソコンやデータのパスワードが分からなくなってしまえば、その資料の存在が消えてしまいます。これによって、経営自体にも影響を及ぼす可能性もあります。
このように、相続において目に見える遺品・資産ですら手間がかかるのに、目に見えないデジタル遺品はさらにその手間の幅が広がるものであることは容易に想像できます。 

「デジタル遺品」への対策とは

では、これらをどうしたらいいのでしょう?
当然、このデジタル遺品については、情報の性質上、所有者本人が事前に終活で整理しておくことが重要。その一言に尽きます。
しかし、その方法は様々ですね。アカウントやデータの保存場所をエンディングノートに記載するのは一般的ですが、同時にIDやパスワードを一緒に記載してしまうことは、その存在を知った第三者に悪用されるといけないので避けた方がいいです。
IDやパスワードを記録したUSBメモリなどの媒体を遺言書と一緒に保管するという方法をとる方もいらっしゃいます。しかし、特に自筆証書遺言などの場合は、相続発生時にその存在自体をしっかり知らせなくてはいけません。一方で、事前に発見されることは防がなければなりません。
守秘義務のある専門家(弁護士等)に依頼して保管してもらうという手もあるかもしれません。この場合は、しっかりとその専門家の連絡先が遺族に分かるようにしておく必要があります。しかし、それにはそれなりのコストがかかります。

デジタル遺品は機微情報が多く含まれているので、現状としては「デジタル遺品については、こうしたら完璧だ」という方法は見出されていません。
高度な情報化社会の進展で、デジタル機器にも厳重なセキュリティ対策が施されてきています。二重のパスワード設定が必要なサービスもあるように、ますます情報の管理が複雑になっています。その情報をどうするべきか、終活における大きな問題になろうかと思います。

今使っているパソコンやスマートフォン・携帯電話といった「デジタル遺品」となりうるものが、すでに手元に存在している、ということを皆さんご自身が知ることだけでも有効な終活に一歩前進することになります。
そして、隠したい情報は今のうちに隠しておいてください。 

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