第14回 相続税が戻ってきました!(更正の請求具体的事例②)

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油良 俊寛

2019-05-31

第14回 相続税が戻ってきました!(更正の請求具体的事例②)

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前回に続き、更正の請求が認められた具体的事例についてご紹介します。
今回は、土地の評価だけでなく、自社株についても過大に評価され申告がなされていました。
まさに、相続が専門でない税理士に任せたことにより、相続税を払い過ぎてしまっていた事例です。

被相続人は東京都23区のベッドタウンに不動産を保有する企業(不動産業)のオーナー社長。
3年前にお亡くなりになり、会社の顧問税理士により相続税の申告、6000万円もの納税を終えていました。
当初相続税の申告書を拝見したところ手書きだったため、こちらとしては相続税を還付できる可能性が高いのではないか?と思っていた案件です。(相続税の申告書が手書きの場合、年配の税理士が申告しているケースが多く、税制の改正などについていけていないことが多いのです。)
その後、更正の請求に至りましたが、今回の主なポイントは以下の2点でした。
 

自社株の評価と個人所有土地の評価が重要

①自社株の評価について、純資産評価額における法人所有土地および建物付属設備の評価額が過大に評価されていたこと。
②個人所有土地の評価について、適正な不整形地補正率等が適用されていなかったこと。
 

自社株の評価が大事

自社株は、中小企業オーナー社長の基本的な財産であり、財産の大半を占めることもよくあります。自社株も当然、相続財産ですので、自社株評価が高ければ高いほど、相続税評価が高くなります。
自社株については、以下の遺言相続.comバックナンバーもご参照ください。
「第13回 事業承継税制・自社株問題とは何か?」(2019.1.18)
「第18回 事業承継税制は結局のところ株価対策は必要」(2019.1.11)
さて、自社株の評価方法には配当還元方式と原則的評価方式の2種類があり、さらに原則的評価方式は大きく「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」の2つに分かれます。
「類似業種比準方式」による評価方法とは、同業の上場会社の「株価」をもとに、会社の1株あたりの「配当」、「利益」、「純資産」の3つから評価する方法です。(評価額を算出するための数式がありますがここでは割愛します。)
・会社が出している配当が多ければ多いほど
・会社の利益が大きければ大きいほど
・会社の資産が多ければ多いほど
自社株評価(=相続税評価)が高くなります。
逆に、自社株対策として、これらの逆を行えば評価を下げることができるわけです。
・配当を引き下げるまたは無配当にする
・利益を引き下げる
・資産の簿価を引き下げる


一方で、「純資産価額方式」は、会社を解散させたらいくらお金が戻ってくるかという考え方です。
株主に返ってくる金額をもって株式の評価額にしましょう、というものです。
会社を解散させた場合に株主に返ってくる金額とは、会社の純資産価額(借入を返済したあとの金額)から含み益に対する法人税を納めたあとに残る金額のことです。
この金額が純資産価額方式により計算した自社株の相続税評価額になります。
純資産価額を算出するにあたり、資産や負債についてはそれぞれ帳簿価額から時価(相続税評価額)に洗い替える必要がありますが、その際に評価を間違えることがあります。

今回の事例で少し細かく見てみますと、この2つの評価方式のうち、「純資産価額方式」における土地と建物付属設備の相続税評価額が過大に評価されていました。
a.土地の評価について、
土地には様々な形や特徴がありますが、不整形地とは、整形地(正方形や長方形など)ではない、三角地、細長地、L字型などの土地のことです。
不整形地は、建物を建てる際に有効活用できなかったり、建築方法の制約があったりする場合もあり、評価額は一般的に低くなります。
不整形地の評価額は、不整形の程度や位置、地積の大小により「不整形地補正率表」に定められている不整形地補正率を乗じて計算します。
今回は、この不整形地補正率が適正ではない高い補正率によって算出されていました。

b.建物付属設備の評価について
建物に付属されている設備(例えば、電気設備、ガス設備など)は、建物と構造上一体(=固定資産税評価額が一体)になっていれば、附属設備等の評価は、家屋の価額に含めて評価を行い、評価価額を算出します。
 

土地の評価も大きく影響する

上記①の土地の評価と同じく不整形地補正率の修正に加え、側方路線影響加算率も間違って計算されていたため、適切に修正することによって、土地の評価額を引き下げることができました。側方路線影響加算率とは、例えば角地など、土地が2つの道路(正面と側方)に面している場合に評価額が加算されることをいいます。正面路線価に側方の路線価の一定割合を加算して算出することになっています。(その際に使用するのが側方路線影響加算率です。)

不動産(土地、建物等)の評価が一番のポイント

上記①、②ともに、結局のところ、不動産(土地、建物等)の評価が相続税評価額に大きく影響する(税理士によって大きく評価額がぶれる)ということがご理解いただけたと思います。
今回の更正請求の結果、約1,500万円もの相続税の還付を受けることができました。

やはり相続税の申告は、相続専門の税理士にお任せするのが一番ですね!

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税理士

監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)にて東証1部上場の大手商社などの金融商品取引法監査に従事
税理士法人ゆびすいにて相続税、法人税、所得税など各種税務案件に従事
2017年アステルフォース税理士事務所を開設、資産税を中心に活動し現在に至る
株式会社アレース・ホールディングス取締役

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