第13回 各遺言の方式に共通する要件

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酒井 勝則

2019-05-14

第13回 各遺言の方式に共通する要件

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はじめに

 前回までに、遺言の様々な方式(普通の方式、特別の方式)をご紹介してきましたが、今回は、遺言に共通する要件をご紹介します。遺言の方式には、「普通の方式」として自筆証書遺言、秘密証書遺言及び公正証書遺言があり、「特別の方式」として隔絶地遺言及び危急時遺言があります。これらの遺言の中には、各遺言に特有の要件がある一方で、複数の遺言に共通する要件もあります。
 それでは、複数の遺言に共通する要件として、どのような要件があり、具体的にどのような問題が生じるのでしょうか。  

遺言を加除・訂正する場合の要件とは?

 遺言に加除その他変更すべき箇所がある場合には、遺言全部を書き直す必要はなく、所定の方式で加除・訂正することができます。民法上の規定は、以下のとおりです。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。


 上記規定は、自筆証書遺言に関する規定ですが、秘密証書遺言(民法第970条第2項)、特別の方式の遺言でも準用されています(民法第982条)。遺言中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に押印しなければ効力が生じません。これは、遺言の変造(遺言者でない者が勝手に遺言の内容を変更すること)を防止するために、遺言の加除・訂正についても、厳格な要件を定めているのです。
 この方式に違反した加除・訂正は無効であり、加除・訂正はなかったものとして取り扱われることになります。よって、この場合、加除・訂正をする前の文言に従って遺言が解釈されます。この点に関して、遺言内容の変更を伴わない明らかな誤記の訂正には、上記訂正の方式は適用されないという裁判例がありますが、どのような場合に明らかな誤記の訂正にあたるかの判断が難しい場合もあります。そこで、変更後の遺言をできるだけ有効とするためには、上記の方式にしたがった加除・訂正をすることが無難といえるでしょう。  

証人及び立会人の欠格事由とは?

 自筆証書遺言以外の遺言については、証人あるいは立会人による立会いが必要とされています。民法上の規定は、以下のとおりです。
(証人及び立会人の欠格事由)
第九百七十四条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人


 証人及び立会人は、遺言者の真意を確認できる者でなくてはなりません。そこで、一般的に遺言者の真意の確認が難しい未成年や、遺言(相続)について利害関係がある親族、公証人の関係者などは証人になることができないとされています。これを証人及び立会人に「欠格事由」があるといいます。
 それでは、遺言作成に立ち会った証人及び立会人に欠格事由がある場合、その遺言の効力はどうなるのでしょうか。この場合、欠格事由のある者は、証人・立会人としてカウントされず、その結果、遺言の各方式で求められる証人・立会人の人数の要件を満たさなくなれば、遺言は無効となります。他方で、たとえ、欠格事由のある者が、証人・立会人となっていたとしても、その者を除いて、証人・立会人の人数の要件を満たしていれば、その遺言は有効となります。  

共同遺言の禁止とは?

 遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることはできないとされています。民法上の規定は、以下のとおりです。
(共同遺言の禁止)
第九百七十五条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。


 このような共同遺言を禁止する趣旨は、一方の遺言者の遺言の内容や撤回の自由を他方の遺言者の遺言の内容によって制限されてしまうおそれがありますし、一方の遺言者の遺言が無効となった場合に他方の遺言の効力がどうなるのか疑義が生じてしまうかもしれないからです。共同遺言にあたるかどうかは、同一の証書に複数の者が遺言を記載しているという形式的な要件と、その証書で示された各遺言者の遺言の内容がお互いに関連し、切り離して考えることができないという実質的な要件から判断されることになります。
 この共同遺言でしばしば問題となるのが、夫婦共同名義の遺言です。例えば、妻の関与なしに夫が勝手に夫婦共同名義の遺言を作成した場合、妻の遺言部分は、そもそも妻の意思が存在しないので無効となります。一方、夫の遺言部分も、妻の遺言部分と内容上の関連性があり、両者を容易に切り離して考えることができない内容の場合(例えば、夫が死亡すれば妻がまず全財産を相続し、夫婦が死亡した場合には子ども達が相続するといった内容)、夫の遺言部分も、共同遺言にあたるとして、無効となってしまいます。
 したがって、たとえ夫婦で内容がほとんど同じ遺言を作成するような場合であっても、一つの遺言書を作成するのではなく、夫と妻それぞれ別の遺言書を作成しておく必要があります。

 次回は、遺言の解釈の方法や無効・取消しとされる場合について検討します。
 

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酒井 勝則

東京国際大学教養学部国際関係学科卒、
東京大学法科大学院修了、
ニューヨーク大学Master of Laws(LL.M.)Corporation Law Program修了

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