第6回 負担付遺贈

第6回 負担付遺贈

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前回までの記事では、意図に応じた財産承継を実現するための遺言信託等について、ご説明いたしました。今回は、財産の受け手に対して一定の義務を負担させることで、遺言者の意思の実現を図るという特徴を有する、負担付遺贈についてご説明いたします。

1 負担付遺贈とは

遺贈とは、遺言によって自らの財産を無償で他人に与えることをいいます(民法第964条)。
負担付遺贈とは、遺贈のうち、財産の受け手(「受遺者」といいます。)に対して、(遺贈の目的物の価額を超えない限度において)一定の法律上の義務を負わせるものです(民法第1002条第1項)。
 たとえば、夫A、妻B、子Cがいる場合に、夫Aが子Cに対し、自分の死後に妻Bの面倒をみるという負担付きで、所有する土地を遺贈するというケースが考えられます。
 上記のとおり、受遺者が負う責任は遺贈の目的物の価額が上限となるため、負担付遺贈をする際には、目的物の価額と負担の内容とのバランスを確認すべきです。

2 負担の内容

負担とは、法律上の義務であり、遺贈と引換えに実行される反対給付又は対価ではありません。負担の内容は、確定性、実現可能性、適法性及び社会的妥当性という、法律上の義務として有効であるための要件を備えていることが必要です。
「生活費の面倒をみる」や、「ペットの世話をする」といった程度の内容であれば、義務内容に一定の抽象性はあるものの、負担の内容として有効であると認められる可能性はあります。しかし、負担の内容が抽象的であるほど、様々な場面で、その有効性、さらに負担が履行されたか否かの判断が困難になり、紛争が生じる可能性が高まります。
したがって、負担の内容を、可能な限り具体的に特定することが望ましいです。

3 遺贈の放棄・承認

遺言者の死亡後に、受遺者は、負担付遺贈を承認するか放棄するかを選択することができます。受遺者が放棄を選択すると、遺贈の目的物を取得せず、かつ、負担も負わないことになります(民法第986条第1項及び同条第2項)。
したがって、遺言者は、死後に負担付遺贈が放棄されることを防ぐために、生前に受遺者と十分に話し合い、負担の履行についての理解・同意を得ておくべきです。

4 負担が履行されないとき

受遺者が負担付遺贈を放棄せず、目的物の贈与を受けているにもかかわらず、負担を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めて負担の履行の催告をすることができます。その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法第1027条)。
 この取消請求権が行使されると、遺贈の効果が消滅し、その目的物は相続人に帰属することになり、負担も相続人が負うことになると考えられます。
 このように、受遺者が負担を履行しないからといって、遺贈が効力を生じない、当然に無効になる、というわけではない点に注意が必要です。遺言者は、死後に負担が履行されなくなる状態を防止するために、生前に受遺者と十分に話し合い、負担の履行についての理解・同意を得ておくべきです。

5 まとめ

以上のとおり、負担付遺贈により、自らの意思をより確実に実現させるためには、①負担の内容を可能な限り具体的に定めること、②遺贈の目的物と負担のバランスをとること、③受遺者が遺贈を放棄する可能性及び受遺者が負担を履行しない可能性を減少させるために、生前に受遺者からの理解・同意を得ておくことが重要です。


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弁護士

早稲田大学法学部卒業
早稲田大学法科大学院修了

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