第57回 祭祀主宰者の指定

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益子 真輝

2023-01-13

第57回 祭祀主宰者の指定

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1 はじめに

今回は、祭祀主宰者の指定について解説をします。
まず、祭祀財産とは、系譜(始祖から代々の家系を書いた家系図)や祭具(位牌・仏壇)、墳墓(墓石・墓地)などのことを指します。これらの性質上、たとえそれ自体に価値があるものであっても、一般的な相続の対象とすることは適当ではないため、祭祀財産は、一般の相続財産には含まれないものとされています。
つまり、祭祀財産は、被相続人の財産に属した一切の権利・義務が相続人に承継されるという原則に対する例外として、相続財産には含まれないとされています。

2 祭祀主宰者の指定方法

祭祀財産は、祭祀を主宰すべき者(祭祀主宰者)が承継します。祭祀主宰者の指定方法としては、以下のとおりです。なお、祭祀主宰者は、被相続人の相続人である必要もなく、被相続人と親族関係を有し、かつ、氏を同じくする者であるなどの必要もありません。

⑴ 被相続人が指定
 祭祀主宰者の指定方法としては、まずは、被相続人の指定により行われます。被相続人による指定の方法は、特別の期限はなく、生前行為であっても、遺言でもよく、それら書面によっても口頭でもよく、明示でも黙示でも構いません。いかなる方法であっても、指定の意思が外部から推認できれば足りると解されています。
例えば、過去の裁判例においても、(被相続人による明示の指定はなかったものの、)裁判所は、被相続人が生前にその全財産を贈与して家業を継がせた者を祭祀の主宰者に指定したものと認定されたものがあります(名古屋高判昭和59年4月19日家月37巻7号41頁)。
もっとも、遺言書において、祭祀主宰者の指定を明示的に記載する場合には、祭祀主宰者が明らかになりますので、紛争を未然に防ぐことができます。

⑵ 慣習による指定
仮に、被相続人の指定がないときには、その地方の慣習により指定されます。慣習は、被相続人の住所地の慣習をいいますが、被相続人の出身地の慣習又はその職業に特有の慣習などがあれば、それによることもできます。

⑶ 家庭裁判所による指定
被相続人の指定がなく、慣習も明らかでないときは、家庭裁判所が祭祀の主宰者を指定します。
家庭裁判所の祭祀承継者の指定は、相続人その他の利害関係人の申立てによる調停又は審判手続によってされます。

3 付言事項について

付言事項とは、遺言者の感謝の気持ちなどの法的拘束力を有しない遺言書に記載された事項を指します。
法律上、付言自体は禁止されておらず、祭祀との関係では、葬儀、埋葬方法などについての希望を記載したりすることも可能です。
もっとも、付言事項は、法的な拘束力を有しているわけではないため、あくまで遺言者の希望として記載されるだけであり、その実現は、相続人等の意思に任せられ、遺言者の希望と異なるやり方を行うことも可能です。
しかし、遺言者の最後の希望として記載されている内容を尊重する相続人が一般的であると思われますので、希望する事項を記載することに一定の価値はあるとされています。

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益子 真輝

同志社大学法学部法律学科卒業
神戸大学法科大学院修了

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