第50回 遺言書を作成する際の検討と対策(その③)

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益子 真輝

2022-06-03

第50回 遺言書を作成する際の検討と対策(その③)

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はじめに
今回も、事例ごとに遺言書を作成する際の注意点について解説していきます。

ケース

<CASE>
Aは、2020年4月に、公正証書遺言(以下「本件遺言書」という。)を作成した。当時、Aと妻Bの夫婦関係は円満とは言えず、別居状態であったため、Aは、Aが所有するすべての不動産(以下「本件不動産」という。)がBに相続されることを防ぎたかった。そのため、Aは、本件遺言書にて、AとBとの間の子どもC(その他にもAB間には、子どもDがいる。)に、本件不動産を相続させ、B及びDに対して、Aが有するすべての預貯金(以下「本件預貯金」という。)を、それぞれ半分ずつ相続させることを定めた。しかし、Cが、2022年5月において、病気により急死してしまった。そこで、Aは、本件遺言書の内容を変更して、やむを得ず、Dに本件不動産のみを相続させ、Bに対しては、本件預貯金の一切を相続させたいと考えた。なお、Aの推定相続人は、2020年4月当時、B、C及びDであり、Cが死亡した後は、B及びDである。

検討と対策

⑴ 本件のように、遺言で財産を相続することとされた相続人(C)が死亡した場合、この部分の遺言の記載については、遺言の効力がなくなり、当該部分については遺言のない状態となります。そのため、遺言書全体が無効になるわけではありません。しかし、本件においては、Aは、Cに対して、本件不動産を相続させることを前提に本件遺言書を作成していることから、遺言書全体が無効になるわけではないとしても、被相続人(A)の意図とは異なる結果になる可能性がありますので、本件遺言書全体を作り直す(再検討すること)ことが望ましいといえます。

例えば、本件では、Aとしては、本件不動産がBに相続されることを防ぎたかったため、Cが相続人でなくなった際には、Dに対して、本件不動産のみを相続させ、Bに対しては、本件預貯金を相続させたいと考えていました。それにもかかわらず、Aが、Cの死亡後、Dに本件不動産を相続させる旨の遺言書を、再度作成するにとどまり、本件遺言書全体を変更しなかった場合、本件遺言書により、B及びDに対して、本件預貯金がそれぞれ半分ずつ相続されることになり、Aの意図とは異なる結果になります。

⑵ また、遺言者(A)は、前に行った遺言をいつでも取り消す(正確には、「撤回」といいます。)こともできますが、それは遺言の方式に従って行う必要があります (民法1022条)。つまり、民法に規定された自筆証書遺言などの特定の方式に基づいて、遺言を取り消す必要があります。また、遺言を取り消すことができるのは、遺言者(A)に限られ、遺言者以外の相続人ら他の者(BやDなど)が遺言を取り消すことはできません。また、法律上は、遺言をした後に、前に行った遺言と全面的に抵触する遺言をすれば、「前に作成した遺言を取り消す」などと記載しなくても、後に作成された遺言によりその全部が取り消されたこと(正確には、「撤回」といいます。)になります(民法1023条第1項)。

しかし、疑義を残さないようにするためにも、明示的に遺言を変更する旨の記載等をするべきであると考えられます。具体的には、公正証書遺言の場合、遺言の全部を変更する際には、「遺言者は、令和●年●月●日●●法務局所属公証人●●作成令和●年第●号遺言公正証書による遺言の全部を次のとおり変更する」や、遺言の一部を変更する際には、「遺言者は、令和●年●月●日●●法務局所属公証人●●作成令和●年第●号遺言公正証書による遺言(以下「原遺言」という。)の一部を、次のように変更する。変更しない部分は、すべて原遺言公正証書記載のとおりである。」旨記載することが考えられます。

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益子 真輝

同志社大学法学部法律学科卒業
神戸大学法科大学院修了

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