第26回 相続放棄を考えているなら終身保険を用意しよう

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貞方 大輔

2021-07-29

第26回 相続放棄を考えているなら終身保険を用意しよう

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前々回(第24回)、相続放棄をしても受け取れる遺産、相続放棄をすると受け取れない遺産について触れました。今回はもう少し具体的に、事例を通して考えてみたいと思います。

1.相続放棄と死亡保険金

都内在住の佐藤さん39歳(長男)は、父の資産や家族の状況を見るにつけ、父が亡くなったら相続放棄をするつもりです。

父は68歳で、市の自転車駐輪場にパートとして勤務している年金生活者です。
子どもは2人。長男である佐藤さん39歳と次男34歳です。

父は都内の西側の市に土地をそれなりに持っている元地主。しかし地主と言っても、東京のはずれなので土地は広いが地価は非常に安い状況です。そして何より頭が痛いのは、その土地がほとんど収益を生み出していないことです。現在、自宅のそばにある1000㎡の大きな土地は地元の建設会社に安い賃料で貸しています。その建設会社は大きなバラックで高い塀を設けており、中で何をやっているのか分からず少々不気味。さらにガラクタなのか、売り物なのか分からないモノであふれており、建設会社とはいえ、一体何の事業をやっているんだろうと心配になるような外観です。しかも父に聞くと敷金は取らないで貸しているとのこと。これでは万が一、モノを放置されて建築会社に夜逃げでもされたらどうするのでしょうか。

そして何よりも問題なのは自宅隣の空き地です。ここは10年ほど前まで産廃業者に貸していた土地。今は出て行って更地になっていますが、よくよく見るとタイヤとかよくわからない廃材のようなものが地表から飛び出ています。産業廃棄物などが地中に捨てられるケースというのは意外とある話で、こういったものを処分するには千万単位のお金がかかることもあります。しかもこの産廃業者は既に廃業しているようで、怖くて地中に何が埋まっているのか調べるのもためらってしまう状況でした。父は非常にのんびりとした人で、長男の佐藤さんから『産廃物が埋まってたらどうするの?』と言われても、『別にいいんじゃないの』と特に気にしていない様子。良い人過ぎて、今のような状況になっている気もします。

一方、家庭においては次男と10年以上連絡が取れていません。現在は生きているのか死んでいるのかも分かりません。約15年前に母が亡くなったときも、葬儀には来ましたが、父に小遣いをせびって、翌日には帰ってしまった始末。もともと素行が良くない次男だったのですが、父には度々お金をせびっている模様で、何をしてるのかも分かりません。長男である佐藤さんはもう弟にも関わりたくないというのが本音です。

長男である佐藤さんの今後の懸念点は以下です。
・もし父が亡くなって、自分が土地を引き継いだ時、建設会社が夜逃げをしてしまったらどうするのか。
・隣の空き地も産廃が出てきて千万単位の費用が掛かったらどうするのか。
・父が亡くなった時、弟がこの土地の問題を一緒に解決してくれることはないだろう。
ということです。

2.相続放棄をするなら生命保険(終身保険)とセットで

そこで佐藤さんは、父が亡くなったら相続放棄をすることを決めています。
その一方で、父が生命保険に入っていれば、たとえ相続放棄をしても死亡金は受け取ることができるということを知り、契約者、被保険者が父、死亡保険金受取人が長男の佐藤さん、という契約形態の終身保険に加入したのです。
幸い、父の健康状態に問題は無かったので、無事に加入することができました。これで、相続放棄をしても、保険金は受け取ることができるため、とりあえずは当面の頭痛の種(上記の懸念点におけるお金の問題等)は解決できることになります。
このように、相続放棄を検討する場合は、財産の内容や家族が置かれた状況等に応じて終身保険を活用することによって、お金の問題を解決できることにもなりますので、ぜひ相続放棄と終身保険への加入はセットでご検討いただければと思います。

ちなみに、民法上、相続放棄をしたからといって、財産(例えば上記のような土地)管理の問題について後はまったく知りません、関係ありません、というものでもありません。(相続放棄によって相続人となった人がその財産の管理を始めることができるようになるまで、自分自身の財産と同一の注意をもって管理をしなければならないということになっています。)

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貞方 大輔

立命館大学卒業後、大手生保を経て、アレース・ファミリーオフィスへ入社。
一般社団法人相続終活専門協会 代表理事

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