前回では太陽光の投資と節税の歴史を簡単に江幡が振り返りました。それでは今回は税務面の話を私、税理士の油良から解説したいと思います。個人でも法人でも即時償却(全額損金)できる太陽光発電投資について具体的に見てみましょう。
1.福島復興再生特別措置法の概要
まずはこの制度は『福島復興再生特別措置法』を根拠法としています。概要としては『東日本大震災で特に被災被害が大きかった福島第一原子力発電所に近接した地域に特化した優遇税制』です。
2.税制優遇
A特別償却
機械・装置は即時償却、建物・付属施設・構築物は25%の特別償却
もしくは以下も選択適用できます。
B税額控除
機械・装置は15%の税額控除、建物・付属施設・構築物は8%の税額控除
おそらくほとんどの方がAの特別償却を選択するでしょう。
3.適用条件
この税制優遇を受けるためには以下の4つの条件を満たす必要があります。
・避難解除区域で事業を行うこと
・『地域経済の活性化に資する』事業であること(別途、対象業種が定められています)
・福島県から認定をもらうこと
・開発する市町村へ寄付金を事業者名義で納める事
以上です。
4.ここからわかること
上記3の条件からもわかりますが、行政が絡んでくるため、単純に福島に太陽光発電事業を営めば即時償却が取れるというものでもありません。また、地域経済の活性化に資する事業のため、主に太陽光パネルの下で農業を営む必要もあります。よって、大体太陽光発電事業の契約から着工、引き渡しまで最短でも半年はかかります。よって企業さんが『決算対策したいな』とか暗号資産で億り人になった個人が『損金を作りたいな』と思ってもすぐに出来るものではありません。投資金額も1000万円以上かかるものですし、慎重に計画して投資する必要があります。
5.投資としての側面
主にこういった太陽光発電事業は投資金額の6-7%の売電収入が投資家に入ってきます。投資金額が2,000万円だとすると、120~140万円程度が毎年太陽が照っている限り東北電力から入ってくるわけです。20年間の固定買い取りがほとんどのため、投資金額を上回る売電収入を20年間かけて受け取ることが可能です。福島以外の太陽光は大体9-10%程度の売電収入が20年間入ってきますので、即時償却というメリットがある分、投資としてはやや妙味が劣ります。
6.ふくしま産業復興投資促進特区・復興特区税制
これ以外にも復興特区税制という制度もあります。これは東日本大震災復興特別区域法を根拠法としており、東日本大震災の被災地域全体に雇用機会の確保を向上させるために定めらた優遇税制です。こちらは即時償却ではなく、投資金額の50%償却となる制度です。今年、適用期限を令和5年度末まで延長されています。
7.まとめ
最後にわかりやすくまとめると、営農をする太陽光は即時償却(上記1~5)、営農ではない太陽光は50%償却(上記6、半分損金)とご理解ください。いずれにせよ、払うお金は1度、受け取るのは20年、初年度に普通では出来ない大きな償却が取れる制度なので、税金対策を考えている方は利用すべき制度と言えるでしょう。
税理士
監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)にて東証1部上場の大手商社などの金融商品取引法監査に従事
税理士法人ゆびすいにて相続税、法人税、所得税など各種税務案件に従事
2017年アステルフォース税理士事務所を開設、資産税を中心に活動し現在に至る
株式会社アレース・ホールディングス取締役