第67回 飛行機のオペレーティングリースについて

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江幡 吉昭

2021-03-05

第67回 飛行機のオペレーティングリースについて

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法人の節税商品として保険に勝るとも劣らない飛行機のオペレーティングリースに激震が走っています。そこで今回はこれを取り上げたいと思います。

1.飛行機のオペレーティングリースについて

飛行機のオペレーティングリースと言われても、皆さん、ピンとこないかもしれません。そこで特徴をまず挙げてみたいと思います。

・本質的には飛行機の区分所有(マンション一棟買うのではなく、そんなお金がないので、皆さん区分所有で一室買うと思います。飛行機の区分所有版です。飛行機をみんなで買うイメージ)
・購入時、円建てではなくUSD建てが多い(為替リスクがあります)
・保険のように数年後●円になるということはない(事業リスクが高い)
・一方で損金は2年で100%取れることが多く損金性は高い。(投資して2年で全額損金となる)
・大体7年~10年後お金が戻る(という設定になっている。そうなるかは保障されていない)

これがオペレーティングリースのざっくりとした概要です。

損金を取る金融商品の代表は生命保険ですが、損金としてとれる金額は1億円がせいぜい。それ以上の損金を求める場合、オペレーティングリースとなる場合が多いです。主にリース会社が組成しておりますが、販売(営業)は一般の会計顧問や銀行がお客様に勧めるというケースが多いでしょう。良く会計顧問の先生から「損金取りたいならオペ紹介しましょうか?」など言われた社長さんなども多いことでしょう。(もしくは銀行の法人営業部から提案された方も多いと思います)
2年で投資額の100%損金を取れるし、10年後100%投資額が戻ってきそうだ。ということで投資を決める方もいると思います。

2.オペレーティングリースのリスクについて

一方で、多くが円建てではなくドル建てで投資しますので償還時に為替リスクがあり、10年後円高だと元本を割る可能性や、事業リスクが高いので本当に10年後飛行機を売却したりして投資額の100%戻ってくるのかと言うリスクはあります。

私が銀行にいた2008年前後はオペレーティングリースの満期時にドルで償還される投資家が『投資した10年前よりドル円が2-30%円高になっているので、結局2-30%の損になるのでどうしよう…』というような相談が多々ありました(基本、どうしようもないです…)。これは為替リスクです。ところが、現在は事業リスクが台頭しているのです。

今、そのオペレーティングリース(飛行機)で何が起こっているのでしょうか。

3.オペレーティングリスクの仕組み

ここで簡単にオペレーティングリースの仕組みをご説明したいと思います。

単純化すると(本当はもっと複雑ですが、わかりやすさ重視で簡易化しています)
投資家(儲かっている法人)→SPC(営業者)→飛行機会社
というお金の流れの順番があります。SPCは特定目的会社の略ですが、要はハコとご理解ください。複数の投資家のお金を集めるハコであり管理者です。

複数の投資家が数千万や数億ずつSPCというハコに投資して飛行機を買います。例えばボーイングの737系などの小型機(座席が左右2列で中央が通路になっているような飛行機)なら100億円台で買えます(それでも高い!)。SPCは航空会社に貸してリース料を受け取るわけです。最終的にはSPCはリース満了後、中古市場で飛行機売って投資家にお金を戻す予定でした。

4.新型コロナで相次ぐ航空会社の経営破綻

ご存じの通り、今回の新型コロナでエアアジアジャパンが破綻したり各国の航空会社が苦境に立たされています。航空会社にとっては借りていた飛行機を飛ばすことは出来ませんから、SPCにもリース料が払えなくなるわけです。そうするとSPC自体も受け取れるはずのリース料が受け取れないという事態になります。(このSPC自体の破綻もすでに起きているようですが)投資家にとっては投資したお金がほとんど戻ってこない状況になったり、銀行から借り入れしてこのオペに投資したりしている法人も多いので、リース料が入ってこないので銀行に対する利払いも出来ないという状況に陥っています。まさに事業リスクというものです。

法人が決算対策でオペや生命保険にお金を出すことは多々ありますが、この事業リスクというものがオペは生命保険に比べて非常に高いという(ある意味当たり前ですが)ことが今回のコロナショックで明らかになったと思います。生命保険の事業リスクは保険会社がつぶれることだと思いますが、生命保険機構という万が一のものもありますし、オペと比べればはるかに低いといえるのではないかと思います。

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江幡 吉昭

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