第5回 海外の生命保険について

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江幡 吉昭

2018-07-13

第5回 海外の生命保険について

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最近、複数ご質問を受けたので海外の生命保険について取り上げたいと思います。当サイトをご覧になられるような方は相続や遺言について意識の高い方だと思いますので、一度は「海外で生命保険に入った方がいい」と聞いたことがあるかもしれません。

そもそも海外で営業する生命保険会社の商品に日本人が加入することは可能でしょうか?法令では「内閣総理大臣に事前に許可を取る必要」があります。(保険業法第186条、第337条)とはいえ、実際に許可が下りた事例というのはないはずです。ということで実質的には正規に加入することはできませんが、今でも現地に直接行けば加入することが可能です。海外駐在員の方もそうですが、現地で仕事をしていれば現地で保険に入りたいというニーズはありますよね?それと同じです。

海外生保も商品がいろいろとあるのでざっくりと貯蓄性保険商品のメリットとデメリットを挙げたいと思います。

メリット
・日本の生命保険と比べて保険料が安い
日本の終身保険では100払っても死亡保障は105とか110だと思いますが、加入者の年齢によっては100払うとその何倍もの死亡保障を得られます。
・死亡保障が日本と比べて格段に高い保障を付けることができる。
100億を超えるような死亡保障を付けることも可能です。

一方でデメリットも複数あります。
・為替リスク
例えば1ドル100円で1万ドル(100万円相当)の死亡保障が付いていたとしても、ドルが円高になり80円になった場合、80万円の保障になってしまうということです。
もちろん逆に円安になれば、このデメリットはメリットに変わります。
・ブローカーリスク
海外生保は主にブローカー経由で加入することになります。海外送金が面倒だということで、ブローカーに皆さんが保険料を支払った場合、そのブローカーが預かった保険料を個人的に流用してしまったりする可能性もゼロではありません。
・レバレッジをかけた場合、格段にリスクは高まる。
10年以上前からある手法ではありますが、最近この手の質問をよく受けます。「海外保険に加入し、保険そのものを担保に海外の銀行から融資(変動金利)を受け、死亡保障を膨らませる」ということも可能です。それこそ日本ではできない10億以上の死亡保障を付けることができるわけです。そしてこの保険に入るために借りた銀行融資は死亡保険金を受け取ったときに返済し相殺するわけです。
この場合のリスクとしては、3つあります。
・金利が上昇するとリスク
海外の銀行から融資を受けていますので利払いが増えます。
・為替変動リスク
融資を受けているのでレバレッジがかかっていますので為替の変動をより大きく受けます。
・保険加入者が長生きするリスク
本来、長生きはいいことですが、レバレッジをかけた海外保険では逆にリスクとなります。加入して10年で死亡すれば、死亡保険金で海外の銀行の融資も返済して丸く収まるのですが、海外保険の場合、長生きすればするほど利払いをする金額が増えます。よって長生きすればするほど「死亡保険金―支払利息―融資返済=遺族の受取」となるのですが、この遺族の受取が長生きすればするほど小さくなるわけです。
ちなみにこの長生きの問題を解決するために、運用して利払い分、稼ぎましょうという提案をしている海外生保販売業者がいるようですが、問題外と思います。不確実性はそんなことをしても拭うことはできません。逆に不確実性は更に増すことになるでしょう。

海外生命保険そのものを否定するつもりはありません。レバレッジをかけなければ商品そのもは良いと思います。一方で上記のように、法令の壁などもあり簡単に加入することはできません。
個人的には日本の産業の保護という観点からも今後も余程のことがない限りこういった商品は日本で認可されることはないでしょう。 

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